【鍼灸EBM最前線:鍼のエビデンスの現状「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患】
2025/03/06
2025年2月26日「鍼におけるエビデンスの現状:2017年から2022年の鍼のシステマティックレビューとメタアナリシスのレビュー」
このレビュー論文では、鍼がポジティブな効果を出すエビデンスがある疾として、次のようなものがあります。
『慢性疼痛(chronic pain)』、
『腰痛(low-back pain)』、
『変形性膝関節症(knee osteoarthritis)』
『術後の悪心および嘔吐(postoperative nausea and vomiting)、
『片頭痛(migraine)』、
『緊張型頭痛(tension-type headache)』
『癌関連疲労(cancer-related fatigue)』
『更年期症状(menopausal symptoms)』
『女性不妊症(female infertility)』
『男性の慢性前立腺炎 / 慢性骨盤痛症候群)』
の10種類の疾患について、鍼の効果を確認しています。
慢性疼痛、腰痛、膝痛、疲労や更年期などは鍼の効果も出やすいし、患者さんも多いので、リソースを割く価値は高いです。上記の知識は定期的にアップデートしています。このフェースブック記事でも2024年は『更年期症状』をかなりアップデートしていました。
『腰痛』も『片頭痛』も2025年にアップデートしていています。
82疾患が「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患です。
以下、引用。
【麻酔科と疼痛】
「全身麻酔/集中治療」
「即自的疼痛緩和」
「筋筋膜痛(マイオフェーシャル・ペイン)」
「痔核切除後の痛み」
「外科手術後の疼痛」
「外科手術後の喉のこわばり」
以上、引用終わり。
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上記では、「筋筋膜痛」が最重要であり、トリガーポイントの研究は欠かせないと個人的には思います。学問的な研究以上に、筋肉の起始~停止の触診と刺鍼のテクニックが重要な印象です。
以下、引用。
【代謝性疾患】
「糖尿病性胃不全麻痺」
「糖尿病性神経障害」
「肥満」
「骨粗しょう症」
「尿毒症性掻痒症」
「体重減少」
以上、引用終わり。
「糖尿病性胃不全麻痺は、コクラン・システマティックレビューがあります。
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2018年12月18日コクラン・システマティックレビュー
「『胃不全麻痺』の鍼」
以下、引用。
「【著者の結論】鍼単独または胃薬と併用した鍼は、薬物単独と比較して、糖尿病性胃不全麻痺を改善するという非常に低い確度でのエビデンスが得られた」
以上、引用終わり。
「糖尿病性神経障害」は、対応を考えておく必要はあります。
2023年にベルリン・シャリテ大学病院がランダム化比較試験(RCT)を発表しています。
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2023年ベルリン・シャリテ大学病院
「糖尿病性末梢神経障害関連症状患者に対する鍼治療:ランダム化比較臨床試験」
※「【結論】 鍼治療は、日常的な治療と比較して糖尿病性神経障害DPN関連の訴えを有意かつ永続的に減少させ、副作用は軽微で忍容性も良好です。」
「骨粗しょう症」の鍼が有望というのは、ちょっと驚きました。
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2022年
「骨粗しょう症に対する鍼治療:臨床および前臨床研究のレビュー」
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「骨粗しょう症」は、
リスク管理として、脊椎圧迫骨折の場合の背腰部の圧痛と、
「拳による打診」の感度と特異度が重要知識です。
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2010年3月
「脊椎圧迫骨折 – 診断を助ける新たな臨床徴候」
※「拳の打診徴候の感度は 87.5%、特異度は 90% でした。」
2023年1月に、「尿毒性掻痒症」のシステマティックレビューが発表されて、弱い推奨リコメンデーションになっています。
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2023年1月
「尿毒症性掻痒に対する鍼治療」
以下、引用。
【精神科】
「うつ病」
「不安症」
「不眠症」
「チック」
以上、引用終わり。
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「うつ病」、「不安症」、「不眠症」は、鍼の最も得意な疾患です。
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2021年11月
「小児のチック障害に対する鍼治療の有効性:回顧的および傾向スコアマッチング研究」
これらの研究を見ると、鍼灸は運動疾患の疼痛はもとより、内科系、代謝疾患、精神疾患など幅広い病気への対応することが可能で鍼灸治療はこれからまだまだ期待できる治療と言えることができます。