鍼灸でうつは治るの?
鍼灸でうつは治るの?
皆さんは、うつ病に悩んだ経験はありますか?ご自身ではなく、身近な人がうつになってしまったことがあるという経験もあるかもしれません。
うつ病は、気分が落ち込む・やる気が出ないといった精神的な症状と、不眠・疲れやすい・だるいなどの身体的な症状が表れる心の病です。
「ではそのうつ病はどうやって治せばいいのだろう?」とお悩みの方は少なくないと思います。
そこで検討していただきたいのが、からだの不調を緩和させ気のめぐりをよくすることで心の症状も同時に治療する「鍼灸治療」です。
うつ病とは?
うつ病とは、厚生労働省によると、精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、さまざまな理由から脳の機能障害が起きている状態のことと定義されています。
主なうつ病の症状は、「精神症状」と「身体症状」大きく分けることができます。
精神症状 |
気分が落ち込み、だるさや集中力の低下 |
身体症状 |
頭痛や動悸、めまいや睡眠障害(早朝に目覚める、なかなか寝られない) |
どちらも自己判断しづらく、症状の程度も人それぞれ異なるのが特徴です。
「心の病」と言われるため気分の落ち込みだけだと思われがちですが、上記のように“からだの不調”もうつ病の症状の一つである可能性があることを理解しておきましょう。
うつ病の原因
発症の原因は正確にはわかっていませんが、意欲や感情を司る脳の働きに何らかの不調が生じていると考えられています。そのきっかけには、過度なストレスによる「環境要因」と「身体的要因」が挙げられます。
環境要因 |
人間関係のトラブル、幼少期のトラウマ、離職や離婚などの急激な環境の変化、自身の環境に関連するストレスなど |
身体的要因 |
慢性的な疲労、更年期障害、脳血管障害など |
うつ病は、「環境要因」と「身体的要因」がそれぞれ複雑に絡み合って引き起こされているために、治癒するのは簡単ではありません。従来は、精神科医や心療内科に通い服薬を中心とする治療が一般的でしたが、最近では鍼灸治療も有効とされてきました。
鍼灸治療はうつ病に効くの?
「うつ病に鍼灸治療が効くのか?」とは、この記事をご覧の方が一番知りたいことなのではないでしょうか?
鍼灸治療は、からだ全体のバランスを整える東洋医学の一分野であり、からだと同時に心をケアする効果が見込まれます。こうした背景から、うつ病の解消にも繋がると考えられています。
東洋医学の観点では、私たちのからだには「気」のエネルギーが流れており、心とからだのバランスを保っていると言われていますが、そのバランスが崩れると心やからだの不調としてさまざまな症状が表れます。
鍼灸では、うつ病もその症状の一つと考え、「気」のエネルギーの偏りを見つけ治療します。的確なツボに鍼やお灸で刺激を与えることで、気のめぐりを改善し心とからだのバランスを整え、うつ病の治癒に繋げるといった治療のアプローチができます。
また、鍼灸治療による血流の促進作用を利用し、脳の血流を改善させることでうつ症状の緩和にも繋がります。
科学的根拠はあるの?
NIH(米国国立衛生研究所)は、うつ病の症状でもある食欲不振や睡眠障害、頭痛、肩こりなど心やからだの症状について、科学的根拠に基づいた効果検証を進めています。
最近は、薬で対応できない症状への代替治療としても選ばれています。
からだの不調は心の不調にも繋がり、それが悪循環となって、うつ症状を引き起こしてしまう原因になります。鍼灸治療はその悪循環をくい止め、良い方に向かうサポートが出来るのです。
鍼灸院はうつ病に対してどんな治療をするの?実際に鍼灸院で行う治療法をご紹介します。
「鍼灸院ではどんなことをやっているのかわからないから、行く勇気が出ない」という方もいるでしょう。この章では、鍼灸院で行われているうつ病の治療についてご説明します。
問診
うつ病の症状に対して一人ひとりに合った治療方針を立てるため、まずは普段の生活環境、体質、気になる症状など、じっくりとお話を伺います。
話せる範囲で構いませんので、一緒にベストな治療を考えるために、気になることがあれば気軽に担当の鍼灸師にお話しください。
鍼灸治療
うつ病の鍼灸治療は、鍼やお灸を使い、からだが緊張している部位や心に効くツボに刺激を与え、心とからだのバランスを整えていきます。
治療中はからだ中の血行が促進され、リラックス効果につながるため、心やからだの緊張がほぐれて寝てしまう方もいるほど心地良いですよ。
鍼通電法(パルス療法)
鍼通電法とは、鍼から電気を通すことで、血行促進や筋肉のコリを緩和する効果を持つ電気治療です。
この治療は、自律神経の調整に効果があり、精神医療でもうつ病の治療として選択されています。
セルフケアでも使える「心に効くツボ」
鍼灸院に通う気持ちになれない場合は、うつ病に対する鍼灸治療でも使われている「心に効くツボ」を押してみましょう。
「気分がなんとなく落ち込んでいる」「イライラする」「外出が難しいけど、自分でできることはないかな」という方は気軽に試してみてください。
合谷(ごうこく)
【探し方】人差し指と親指の骨が交差する場所から、やや人差し指よりにあるくぼみ
百会(ひゃくえ)
【探し方】頭のてっぺんにある少し凹んでいるところ
神門(しんもん)
【探し方】手首のしわ上、一番小指側にある腱の親指側の縁のところ
これらのツボは、ご自分で押すことができますので、ストレスなどを感じたときに、「イタ気持ち良い」強さで押してみましょう。もやもやしていた頭がすっきりしますよ。
鍼灸治療の頻度について
うつ病の治療で鍼灸院に通う頻度は人それぞれです。目安として、週に1〜2回を約3ヶ月ほどから始めてみましょう。
治療の頻度は症状の状態によって異なりますので、担当の鍼灸師と一緒に、自分に合った頻度を決めましょう。
うつ病の治療は、からだが良くなったと感じたときから少し継続するのがコツです。からだの不調が改善されてきたら、心は少しタイミングが遅れて回復していく傾向にあります。心が回復するまで通院してみるのも良いでしょう。
〈鍼灸治療はうつ病にどう作用するの?〉
鍼灸治療で、うつ病で弱ってしまったからだの土台(ベース)を底上げすることで、結果的に薬の量を徐々に減らすことに繋がります。
その上、薬の離脱作用のリスクも減り、症状が落ちついた後も心身のメンテナンスとして通うことで再発防止にもなります。
鍼灸は、うつ病の治療だけでなく予防の治療としても選択できます。
主な理由は以下の通りです。
心とからだの不調を同時にケアできる
良質な睡眠のためにも鍼灸治療は適している
鍼灸師にアドバイスをもらい生活習慣を見直すことで予防になる
定期的なリラックスとして鍼灸を選択し、ストレスから遠ざかることで予防になる
「うつ病になりそう」「鬱々する日が多いな」と感じたり、大きなストレスで体調を崩しそうなときには、予防策として鍼灸治療を受け、気分をすっきりさせることで予防に繋がります。
特に東洋医学は「気のせいだ」と普段見過ごしてしまいそうな症状の改善を得意としています。「ちょっと調子が悪いかも」という方も、気軽に鍼灸院へ行ってみましょう。