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【鍼灸研究最前線:表皮・真皮・皮下組織のレイヤーと「PIEZO(歪み・圧力の検知レセプター)」】 2025年

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【鍼灸研究最前線:表皮・真皮・皮下組織のレイヤーと「PIEZO(歪み・圧力の検知レセプター)」】 2025年

【鍼灸研究最前線:表皮・真皮・皮下組織のレイヤーと「PIEZO(歪み・圧力の検知レセプター)」】 2025年

2025/03/13

「鍼の力学(mechanics)のメカニズムと学際的イノベーションに関する統合研究」

 2002年にヘレン・ランジュバン博士は、鍼と結合組織の画期的な研究を行います。普通に考えて、鍼を豆腐に刺して、雀啄・回旋すれば、豆腐はボロボロに崩れて、鍼の周りはスカスカになりますが、人体の場合、逆に、鍼を雀啄・旋撚すると、鍼が組織にしっかりとグリップされます。この巻きつく組織は筋肉ではなく『結合組織(connective tissue)』なのです。つまり、鍼の手技によって『結合組織(connective tissue)』『ファシャ(Fascia)』の組織の変型・リモデリングが起こっているのです。

以下、引用。

「2001年にランジュバン(Langevin)が顕微鏡下で鍼と結合組織との機械的相互作用を初めて観察して以来、鍼治療の研究は、鍼と局所の経穴組織、特に結合組織との相互作用にますます焦点を当てるようになりました。」

以上、引用終わり。

2002年 ヘレン・ランジュバン

『米国実験生物学会連合雑誌(FASEB)』

「鍼の周囲の結合組織のエビデンス」

2018年にハーバード大学のヘレン・ランジュバン博士はNIHアメリカ国立衛生研究所で代替医療を政治的に統括するアメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH:National Center for Complementary and Integrative Health)の所長になりました。

以下、引用。

 

「針の旋撚などの操作中 、針と疎性結合組織の間に機械的結合が発生し、コラーゲン繊維が針本体に巻き付いて、結合組織の変形と伸張を引き起こします。組織の伸張の程度は、針の旋撚サイクルの数と振幅に依存します」

「結合組織内の線維芽細胞の急速な細胞骨格リモデリングは、組織レベルで測定可能な収縮と歪みの現象につながる可能性があります。ランジュバン(Langevin)は、マウスに鍼治療を行ったところ、針から数センチ離れた結合組織内の線維芽細胞で測定可能な細胞反応が誘発されたと報告しました。針を回転させると、コラーゲン繊維が針に巻き付いて引っ張られ、「糸のような」構造を形成し、針を所定の位置に保持すると15〜20分間持続し、結合組織内に持続的な内部張力が生じます。」

 

「鍼治療は細胞レベルで幅広く複雑な効果を発揮します。肥満細胞と線維芽細胞は、鍼治療の機械的刺激に反応する主要な細胞タイプです。鍼治療は機械的力を加えることで、コラーゲン繊維を針の周りに巻き付け、マスト細胞の膜にある機械感受性イオンチャネル(例:ピエゾチャネルPiezo channels)を活性化します。この活性化により、Ca2+肥満細胞は活性化されると脱顆粒を起こし、ヒスタミン、ヘパリン、さまざまなサイトカインなどの生理活性物質を放出します。」

以上、引用終わり。

2021年デビッド・ジュリアス先生のTRPV受容体と同時にノーベル医学賞を受賞したのは、アーデム・パタプティアン(Ardem Patapoutian:1967-)教授であり、圧力を感知するメカノレセプター「ピエゾ1(PIEZO1)」「ピエゾ2(PIEZO2)」の発見でした。

メカノレセプター「ピエゾ(PIEZO)」は、皮膚の繊細な触覚の研究から、皮膚の歪み・圧力を検知するレセプターとして2010年に最初に発見されました。

 個人的意見では、2000年代から2010年代の最大の変化は、「ファシャ(Fascia)」「結合組織(connective tissue)」と鍼の研究者ヘレン・ランジュバンによるものです。ヘレン・ランジュバン先生がハーバード大学の研究者であったことから、2007年にボストンのハーバード大学で第1回の国際ファシャ会議((International Fascia Research Congress)が開催されます。

 また、2002年に『トリガーポイント鍼療法』(医道の日本社)の著者であるイギリスのピーター・バルドリー(Peter Baldr)先生は、奥さんが斜角筋に痛みを訴え、気胸が怖いために「浅い鍼スーパーフィシャル・ドライニードリング」で効果を出し、臨床の9割は浅い鍼で効果が出ることを報告しました。

 日本の臨床家は浅く、響かせない鍼で臨床効果を出しています。また、中国でも「腕踝鍼(わんかしん)」は横刺の響かさない鍼で効果を出しています。日本の八分灸は浅い部分への刺激で臨床効果を出しています。もちろん、ピーター・バルドリーも9割は浅い鍼で効果を出せるが、1割は深い「ディープ・ドライ・ニードリング」でないと効かないと論述しています。

 さらに言うなら、1992年以降のEBM時代にエツァート・エルンストなどは「真鍼と偽鍼の効果に違いはないので、鍼はプラセボ」と批判しました。ところが、このランダム化比較試験(RCT)の偽鍼は、「浅く刺した鍼」であり、「深くツボに刺して得気した鍼」を真鍼とする「中医学TCMパラダイム」によるものです。

 浅い鍼や八分灸は、どこに作用しているか?

表皮

真皮

皮下組織

筋肉

のレイヤーでは、表皮・真皮・皮下組織が考えられます。

 論理的に考えて、2025年以降の鍼灸の研究のターゲットは、この「ファシャ(Fascia)」の領域になると個人的には考えているとのことでした。

 これらの研究結果などから鍼刺激がどのようなメカニズムで刺激が脳に反応を与え、病気がよくなっていく仮説が証明されてきています。

 これらの研究が臨床をしている鍼灸師にとって大変有り難い知識となっています。

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