永野剛造先生の朱氏頭皮針の論文
2025/03/04
『東方医学』の文献調査中に、朱氏頭皮鍼の論文を4つ読む。
「朱氏頭皮鍼が著効を示した脳血管障害の1例」
永野剛造、國安則光、森和、矢野幸彦、永井聡
『東方医学』VOL.9 NO.3 1993年
・50歳男性、左片麻痺・構音障害。平成3年3月5日に倒れる。CTで右被殼出血。左口角下垂。左上下肢完全麻痺。知覚障害なし。軽度の言語障害。脳浮腫が改善したため、4月11日に頭皮鍼治療を始める。右頂顳帯(前頂から頭維)に刺鍼刺激しながら上肢を動かすように指示。上下肢屈筋共同運動が出現し、翌朝まで置鍼して抜針。4月12日には左上下肢が少し動くようになったとの自覚的変化が報告された。4月19日の2回目の頭皮鍼治療では、背臥位で左手は口まで挙上可能となる。下肢は左足関節底屈・背屈が可能となり、患者は「鍼を刺すと左上下肢に電気が通る感じがする」と述べる。5月27日まで1週間に2回、合計10回の頭皮鍼治療。5月27日以後は1週間に1回の頭皮鍼治療。6月21日には歩行時に患側の軽度の引きずりを認める程度。8月14日に退院となった。
「頭皮鍼が著効を示したくも膜下出血後遺症の1例」
永野剛造、矢野幸彦、永井聡、末永和栄、國安則光、森和、
『東方医学』VOL.10 NO.1 1994年
・71歳男性、平成3年1月27日、クモ膜下出血にて入院。動脈瘤クリッピング後、水頭症発症。3月18日にシャント術、気管切開。7月30日に他院より転院。四肢拘縮が強く、他動的な伸展・屈曲運動もほとんど不能であった。植物状態。理学療法での運動機能の改善、意識状態の改善も不可能と判断されたが、家族の強い希望で頭皮針を試みた。8月23日、1回目の頭皮針。左片麻痺が強く、左半身優位に痙攣が見られたこととCTの所見から右頂顳帯(前頂から頭維)に刺鍼し、刺激を加える。初回の治療で左下肢の拘縮が改善し、左上肢の肘関節の屈伸が若干可能となった。8月30日、2回目の頭皮針。両頂顳帯(前頂から頭維)に刺鍼し、刺激したところ、右下肢の拘縮がやや改善し、ADL上オムツ交換が絡になった。右上肢も肘関節部が他動的に屈伸が可能となった。9月2日、四肢拘縮に著明な改善が見られた。9月6日、脳波計で周期性一側性てんかん様放電(PLEDs)の多発を認める。9月20日、5回目の頭皮針。右膝関節部の動きが改善した。9月21日刺鍼時の意識清明化が認められ、テレビ・家族の理解が確認された。以後、1週間に2回の頭皮針。11月8日、15回目の頭皮針。脳波計で周期性一側性てんかん様放電(PLEDs)の減少を認める。車椅子に5分間乗せたところ、開眼して1点を見つめていた。呼びかけに反応し、声のほうをむいた。1月21日脳波計で周期性一側性てんかん様放電(PLEDs)の消失を認める。1月24日、27回目の頭皮針。車椅子上にて坐位が安定し、10分程度可能となった。
コメント:論文の筆者は「考察」の「痙攣について」で、「朱氏頭皮針はテンカンに有効であると朱明清医師は著書で述べており、著者らも経験的には脳性麻痺児らに頭皮針を行うと、痙攣発作が減少することを認めているが、文献上では報告されていない」と述べている。さらに「中国では、てんかんはよくみられる病証であり、治験例も多く、鍼灸の適応症の1つと考えられている。てんかんに対する鍼治療は、一般には、風池・風府・人中・大椎・腰奇を常用穴とし、大発作・小発作・精神運動発作・焦点発作などにそれぞれ予備穴を用いる」と述べている。
「頭皮針により書字機能に改善が見られた右片麻痺の2例」
永野剛造、佐藤謙介、森和、朱明清
『東方医学』VOL.11 NO.1 1995年
・92歳男性。脳梗塞後遺症、右不全麻痺。平成5年3月14日脳梗塞にて入院。CT所見で多発性脳梗塞。額頂帯(神庭から百会)前方4分の1、後方4分の1、左頂顳帯(前頂から頭維)に刺鍼し、右上肢の運動療法。11月10日から1週間に2回の頭皮針を10回続けて、書字機能の著明な改善を見た。
「脳波解析(自己回帰要素波解析)から見た頭皮針の脳血管障害後遺症に対する効果」
永野剛造、佐藤謙介、末永和栄
『東方医学』VOL.12 NO.2 1996年
・8例の男性の脳障害患者で、年齢は24歳ー64歳、交通事故による脳挫傷4例。脳血管障害2例。もやもや病による脳梗塞1例。ヘルペス脳炎後遺症1例。発作から頭皮針開始までの期間は10ヶ月から20年。右片麻痺は6例、左片麻痺は2例。脳挫傷では全員が昏睡で気管切開の既往があった。治療開始1回ー2回に脳波検査を行い、1週間に1回の頭皮針を3ヵ月半から9ヶ月施行した後に再検査を行う。