【鍼灸研究最前線】
2025/01/31
韓国のビッグデータ研究で、鍼治療を受けた患者は、鍼治療を受けなかった患者と比較して、死亡リスクが20パーセント以上、低下した
2025年1月29日 韓国・圓光大学
「障害患者および新たに心不全と診断された患者の死亡率に対する鍼治療の影響:全国コホート研究」
韓国の国家健康データベースは、韓国の全人口の99パーセントにあたる5141万人の保険加入者のデータをカバーしています。
このデータベースを用いて、2014年から2016年の間に、新たに9万5千685人が心不全と診断され、そのうち診断後1年以内に鍼治療を受けた2万9千779人と、受けていない5万4千493人を比較しました。
鍼治療を受けたグループは全死亡リスクが20パーセント低下していました。
以下、引用。
「本研究では、鍼治療を受けた人は、治療を受けていない人に比べて心不全と診断された障害者の死亡率が低いことに有意な相関関係があることが確認された。」
「さらに、本研究では、19回以上の鍼治療を受けた患者の死亡率が最も低いことが判明した。」
以上、引用終わり。
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私は毎日、自己治療をおこなっていますが、さらに、自分で自分を鍼灸治療するモチベーションがさらに高まりました。
2024年2月には『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』に台湾のデータベースを使った、脳卒中の発生率の論文が掲載されました。
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2024年2月
「関節リウマチ患者の虚血性脳卒中に対する鍼治療の効果:全国的な傾向スコアマッチング研究 」
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台湾の全人口2342万人の99パーセントをカバーする台湾政府の健康データベースを利用して、23,226名の新規に診断された関節リウマチ患者を分析しました。理由は台湾の関節リウマチ患者は25パーセントくらいが鍼灸治療を受けているからです。
鍼治療を受けた患者が脳卒中を発生する確率は1000人あたり5.95人だったのに対し、受けなかった患者は1000人あたり12.4人で、鍼治療が脳卒中の発症率を低下させるという結論になりました。40パーセントの発症率の低下です。
日本の『メディカルオンライン』で「鍼治療で関節リウマチ患者の脳卒中リスクが40%減?」というタイトルで記事本文には「驚くべき報告である」「BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)の査読を通ったことに失望している」「大規模RCT(ランダム化比較試験)なしには受け入れがたい」と書かれていました!
私としては、「2024年発表の台湾政府の2342万人のデータベースの研究で鍼治療を受けた患者さんは、脳卒中リスクが40パーセント低下した」「2025年発表の韓国政府の5141万人のデータベース研究で鍼治療を19回受けた心不全の患者さんは死亡リスクが36パーセント低下した」という研究結果は、本当に感動しました。年間19回以上は自分に鍼灸治療をしている私としては鍼灸を職業として選んで、本当に良かったという感想であり、素直にうれしいです。脳卒中の発症率や心不全の死亡率の大規模ランダム化比較試験(RCT)による検証は、おそらく行われないと予測しています。この貴重な情報は、限られた鍼灸プロフェッショナル以外には流通しないと予測します。なぜ、このような「命と健康に関わる情報」「サバイバル・生存につながる情報」が日本のメディアで流通しないのか?も社会学的に興味深い問題だと思います。