【伝統補完医療の最前線:経絡研究】
2024年9月 成都中医薬大学
「現代の経絡診断とその応用」
張鑫瑜(ちょうきんゆ)
以下、引用。
「『霊枢・経水篇』には、
『切(せつ)』、『循((じゅん)』、『捫(もん)』、『按(あん)』をつまぎらかにして、寒温・盛衰をみて、これを調える』とあります。」
【2.経穴の電気抵抗特性の測定】
「経絡経穴が電気抵抗の低い特性があることは、1950年代、日本の中谷義雄が、腎臓病の皮膚電気抵抗を研究し、電気抵抗の低い点を結ぶ線が人体の経絡に近いことを発見しました」
「3.経絡の熱のバランスの不均衡の測定」
「日本の学者、赤羽幸兵衛は、経絡のバランスが崩れると、身体の各部位で異なる温度感覚が生じると考え、この現象を測定するための知熱感度測定法を提唱しました。この方法は線香や熱源を用いて十二経絡の井穴や背部兪穴に熱を加えて、患者の温熱感覚を測定して、経絡の虚実や過剰を判定しました。」
以上、引用終わり。
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経絡の熱バランス不均衡は弘前医科大学の松永藤雄(まつなが・ふじお:1911-1997)教授も注目しました。「内臓の病気の場合、内臓の状態を反映する背部兪穴の部分の温度が低下する」という「エアポケット現象」を研究し、『日本消化器病学会雑誌』などで発表しました。
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1950年「壓診法(圧診法)と其の吟味」
松永藤雄
『日本消化器病学会雑誌』第48巻(1950-1951)No.1-2 P1-23
1971年
「内臓疾患と皮膚温度, とくにエアポケット現象を中心として」
松永 藤雄
『日本鍼灸治療学会誌』1971 年 20 巻 2 号 p. 1-10
1951年
「知熱感度測定による経絡の変動の観察第1報:知熱感度測定法と臨床的応用に就いて」
赤羽 幸兵衛
『日本東洋醫學會誌』1951 年 2 巻 2 号 p. 49-53
わたしは慢性気管支炎の持病があり、悪化して咳が出るときは、右の気戸、庫房や兪府あたりのツボは、冷えます。X線で見ると、ちょうど、この当たりが白くなっています。
旧ソ連・ロシアの東洋医学研究ではサーモグラフィーで、このような皮膚の冷えのスポットを調査していました。
以下、引用。
「【4.経絡の光学特性】」
「現在、経絡の光学特性に関する臨床研究は、主に経絡の高発光特性と経絡の光透過特性に焦点を当てています。」
以上、引用終わり。
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1990年代に日本の神正照(じん・まさあき)博士が、経穴とバイオフォトンの研究をされていました。
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1996年
「ヒト手指先の生物フォトン計測」
神 正照
『全日本鍼灸学会雑誌』1996 年 46 巻 4 号 p. 354
2000年代前半くらいまでは、経穴とバイオフォトンの研究があり、『全日本鍼灸学会雑誌』などにも経穴のバイオフォトン発光の論文が掲載されていました。現在、西側世界ウエスタンワールドでは、下火になっている印象です。わずかに韓国のプリモ・ヴァスキュラー・システムPVS(新ボンハン小体)の研究で、バイオフォトンがとりあげられることがあります(※旧ボンハン小体の金鳳漢教授は、経絡が太陽光を吸収するというドグマがあったようです)。
中国では、経絡は光透過性が高いという研究があるようです。
個人的には、近赤外線療法など光療法と経穴経穴の関連に興味があるので、バイオフォトン関連の現状が知りたくなりました。
2024年の中国の経絡研究を読んでみたところ、なんと1950年代の良導絡と、赤羽根氏法の知熱感度測定からハナシがはじまり、1990年代の日本で盛んだったバイオフォトンなど、この分野がほとんど進展しなかったことに愕然としました。
「経絡現象」の研究も、1950年代の日本の丸山・長浜先生の『経絡の研究』が元ネタなので、やはり1950年代~1990年代の日本は世界をリードしていたと思います。わたしが1990年代に鍼灸教育を受けた学校は良導絡と赤羽根氏法(皮内鍼法)が盛んだったので、体験としては良かったです。
個人的予測では、2025年以降の経絡研究としては、「ファシャ(Fascia)」研究が最重要になると思います。中国でも2025年1月に「経筋と『筋膜経線』の機能比較」という論文が発表されています。
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2025年1月
「経筋と『筋膜経線』の機能比較」
※「この概念は、アメリカの(ロルフィングの)アイダ・ロルフによって最初に提唱され、その後、手技療法の専門家トーマス・マイヤーズによって解剖学の実践の中で体系的に検証・深化され、「筋膜経線」の概念は「アナトミー・トレイン」という書籍で詳しく説明されました」
わたしが今の知識のまま、20代に戻るなら、経絡の解明のため、間違いなく「ファシャ(Fascia)」の研究とトリガーポイント研究に、全てのリソースをつぎ込むと思います(笑)。鍼灸の経絡やヨガ、ピラティスなどのボディワークとの関連性、西洋医学の医師や理学療法士との連携の可能性、新分野の科学的フロンティアでありながら、ほとんど未解明というドキドキ・ワクワク感が最大のモチベーションです。「ファシャ(Fascia)」の知識は、体表解剖と組み合わせると、鍼灸臨床でもっとも役立つからです。その際に、1950年代の日本の経絡経穴研究は、ものすごいヒントになると思います。
現代の問題点は、日本も中国も、おそらく海外も、筋骨格系疾患の臨床で最も重要な「ファシャ(Fascia)」「結合組織コネクティブ・ティシュ」について、解剖学の最初のほうで、わずか1時間程度、勉強する程度であり、まったく臨床に使えないという「教育のアップデートが遅すぎる」ことが問題だと思います。


