【科学の最前線:NCCIH(アメリカ国立補完統合衛生センター)が資金提供するピッツバーク大学医学部の耳鍼研究】
2025年4月30日 ピッツバーク大学医学部
「耳介療法(Auriculotherapy)研究の推進のためアメリカ国立補完統合衛生センターNCCIH助成金を獲得」
ペンシルバニア州ピッツバーク市にある「ピッツバーク大学医学部(Pitt Med:University of Pittsburgh School of Medicine)」は、世界の医学部ランキング15位に入る名門校です。「アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH:National Center for Complementary and Integrative Health)」アメリカ政府保険福祉省(HHS)の国立衛生研究所(NIH)傘下の補完代替医療を研究する政府機関です。
以下、引用。
「アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、ピッツバーク大学医学部麻酔科に『健康なボランティアと慢性腰痛患者における耳介刺激と耳介療法による脳の変化を決定するためのメカニズム的神経画像研究』というタイトルの新しい助成金を交付しました。」
「このプロジェクトは、主任研究者であるキース・M・ヴォクト医学博士(医学博士、アメリカ麻酔科学会フェローFASA 、准教授、麻酔科神経科学研究プログラムディレクター)が主導し、慢性腰痛に対する耳介刺激療法の効果の根底にある脳メカニズムの解明を目指しています。」
以上、引用終わり。
キース・M・ヴォクト博士は、オハイオ州のヤングスタウン州立大学(Youngstown State University)で電気工学の学士を取得し、
オハイオ州立大学(Ohio State University)で、バイオメディカル・エンジニアリングの修士(MS)と博士(Ph.D)と医師(MD)を取得します。
キース・M・ヴォクト博士は、2024年に以下の画期的な耳鍼のツボ・マッピングの論文を書かれています。
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2024年9月16日 キース・M・ヴォクト(Keith M Vogt)
「同側刺激(Ipsilateral stimulation)は、高密度を用いて左一次体性感覚皮質の親指と肩の耳介点の体性局在を示す」
耳穴のマッピングは、1950年代に耳介療法の創始者ポール・ノジェなどフランスの医師グループによって行われました。
カラダに圧痛を人工的につくり、耳穴で確認していきます。
このやり方は、アメリカ耳鍼の第1人者であるテリー・オルセン医師が実験で追試して確認し、疼痛医学の雑誌『ペイン』で発表しています。
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1980年
「耳の診断に関する実験的評価:耳の経穴における体部位マッピングまたは筋骨格痛」
※「40名の患者を対象に、身体の筋骨格系の痛み部位を特定するための医学的検査が行われた。その後、各患者は目に見える身体的問題を隠すためにシーツで覆われた。耳介の診断を行った医師は、患者の病状について事前に何も知らずに、患者の耳を診察し、皮膚の導電性が上昇している部位や圧痛のある部位を調べた。確立された医学的診断と耳介の診断の一致率は75.2%であった。電流の流れの定量的測定と皮膚の圧痛の主観的評価は、どちらも正確な診断を下す上で統計的に有意であった。したがって、これらの結果は、人間の耳介に身体の体部位別組織が反映されているという仮説を裏付けている。」
歴史的には、1950年代にノジェ先生とフランス医師グループはおおまかな耳マップは作成して発表していたのですが、詳細はあいまいでした。
1972年12月に、南京の人民解放軍の軍医たちが2,000人以上の患者で耳穴を検証し、上海人民衛生出版社より南京部队某部《耳针》として出版しました。世界で流通している中国の耳穴マップはこれです。
1974年にポール・ノジェ先生はルネ・ブルディオール(René J. Bourdiol)先生とフランク・バール(Frank Bahr)先生と、ともに耳穴マップを研究して発表し(フランス語 Loci Auriculomedicinae)、さらにフェーズ2.フェーズ3のマッピングを発表しました。フランスの耳穴マップと中国の耳穴マップはかなり異なります。
2009年にイタリアのロモーリ(Romoli)先生が、「セクトグラム(Sectogram)」という「ポイント・ゼロ」を中心にした放射状チャートを『ドイツ鍼医師会雑誌』で発表しました。2009年に文献『耳介診断(Auricular Acupuncture Diagnosis)』も出版します。わたしは臨床で、フランスのノジェの耳穴とイタリアのロモーリ先生のやり方を真似しています。
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2009年「耳のツボの新しい書き換えられたシステムの検証」
2012年には、フランスのダヴィッド・アリミがfMRIを利用した耳鍼分野における新しい耳穴マップ『アリミ・プロトコル(Alimi Protocol)』を含む論文を発表しました。
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2017年にフランスのダヴィッド・アリミがfMRIを利用した耳鍼分野における新しい耳地図『アリミ・プロトコル(Alimi Protocol)』を出版しました。 「セグメントグラム」という耳珠中央からの放射状チャートです。
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2017年ダビッド・アリミ著「アウリキュロセラピ耳介療法:科学的基礎・原則・戦略・治療」
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ダビッド・アリミ先生は「戦場鍼」の開発にも関係しています。リチャード・ニムツォウ(Richard C. Niemtzow:1942-2025)は最初にフランスでラファエル・ノジェ先生の耳鍼を学びました。帰国後、リチャード・ニムツォウはUCLA医学部のジョゼフ・ヘルムズの鍼灸コースで学び、さらにフランスでダヴィッド・アリミにfMRIによる耳穴マッピングと耳鍼用半永久鍼ASPを用いた方を学んで帰国した直後の2001年、 ニムツォウは、テリー・オルセン医師に誘われ、韓国人でカルフォルニア大学アーバイン校で研究していた趙長熙(Zang Hee Cho)教授に紹介されました。趙教授はfMRIを用いて鍼の研究を行い、『ニューズウィーク』で取り上げられ、大きな話題になっていた方です。ここで趙教授が「真の鍼と偽の鍼の違いは、fMRIでは帯状回で判別できる」という情報をニムソウ氏に伝えます。そこで、ニムツォウはさっそく『帯状回』を用いて劇的な効果を得ました。そこでニムツォウが開発したのがASP鍼と、5穴を用いる『戦場鍼(バトルフィールド・アキュパンクチャー)』です。2000年から2020年代はfMRIによる耳鍼メカニズム探求の時代です。
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2002年 趙長熙、テリー・オルセン、ダヴィッド・アリミ、リチャード・ニムツォウ共著論文
「鍼治療:機能的磁気共鳴画像法と陽電子放出断層撮影法による生物学的証拠の探索」
2022年に、わたしは『Tehamo』で、この耳鍼の歴史を簡単に解説しています。
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2022年「耳鍼はサイエンス~耳鍼の歴史と日本の現状」
『Tehamo』4号 99- 2022.
2024年9月16日のキース・M・ヴォクト(Keith M Vogt)先生も参加した論文「同側刺激(Ipsilateral stimulation)は、高密度fNIRSを用いて左一次体性感覚皮質の親指と肩の耳介点の体性局在を示す」は、これらの耳穴マッピング研究の一つとして、かなり重要だと思います。
ピッツバーク大学医学部のキース・M・ヴォクト(Keith M Vogt)博士の研究は、今後、注目ですね。


