【アメリカ鍼灸最前線:アメリカ鍼灸教育の課題】
2025年4月22日
「隣の芝生は青い:アメリカにおける鍼灸教育の教訓と課題を批判的に考察する」
この論文は「中国国家自然科学基金(National Natural Sciences Foundation of China)」の資金提供を受けています。中国政府の資金が入っていますが、面白かったです。
以下、引用。
「1970年代の鍼灸ブーム以来、米国は中国以外では最も包括的で大規模な鍼灸教育システムを着実に構築してきました。」
【2.1.アメリカにおける鍼灸学校の設立】
「日本の鍼治療は、明治維新後、「古典」と「科学的」な流派が共存する形へと進化し、適応、統合、科学的アプローチを特徴としている。日本の流派は腹診を重視し、身体構造や体質の不均衡への対応に優れ、臓腑の虚弱に対する効果的な治療法を提供している。中国の鍼治療と同様に、日本と韓国の鍼治療は最初にヨーロッパに入り、その後1970年代の鍼治療ブームの際に米国で普及しました」
「1972年、間中喜雄は『鍼灸入門(Layman's Guide to Acupuncture)』を出版し、これが日本の鍼灸を米国の教育システムに取り入れる上で重要な役割を果たした)。現在、米国の21の教育機関が日本の鍼灸コースを提供しており、特に東部の州では7つの教育機関がそれを主要カリキュラムの一部として必須としている 。四針法(舎岩鍼法)に代表される韓国の鍼灸は、主に中西部にある11の教育機関で教えられており、1つの教育機関はそれを継続教育プログラムとして提供している。日本の鍼灸や韓国の鍼灸の正式なコースを提供していない学校でも、ワークショップやセミナーを開催することが多く、米国の教育システムにおけるこれらの伝統の根底にある存在を強調している。」
「米国における鍼灸教育の発展における3つの課題」
【3.1 緩いカリキュラム設計と低い全体的な学力水準】
「しかし、ACAOM(鍼灸教育協会)の修士課程の要件は、2,000~3,000時間の学習と少なくとも660時間の臨床実習のみであり、資格認定、評価、教科書作成などを含む鍼灸教育システム構築のための明確な枠組みが欠如しています。教育機関の規模、教育レベル、研修目標に関して大きな自由度があるため、米国の鍼灸教育の枠組みは体系化と安定性を欠き、教育の質の確保が困難となっています」
【3.2 試験の難易度が低く、学校のスタイルが限られている】
「特に、生物医学がコンテンツの30%以上を占めており、鍼灸教育の「西洋化」の傾向を反映しています。初回合格率は80%を超えていますが、試験の難易度は比較的低く、学生が臨床スキルの習得よりも試験の合格を優先するようになっています」
【3.3 実践的な教育理念と専門化の目標によって引き起こされる障壁】
「鍼灸学校のインストラクターのほとんどは臨床現場出身で、指導の中で個人的な経験の共有を重視する傾向があり、体系的な指導が欠けています。コース時間の約3分の2は鍼灸テクニックに費やされており、古典的な理論の研究はあまり重視されていません。さらに、学生の臨床実習は主に外来症例に限られており、病気の進行の詳細な観察が欠けているため、卒業生は複雑な症例を効果的に分析して解決することができません」
【アメリカの鍼灸教育システムのための4つの戦略】
【4.1 監督を強化し、教育制度を改革する】
「しかし、米国の鍼灸大学間の研修目標や組織的特徴の違い、独占禁止法による制限のため、統一されたシラバスはまだ確立されていない」
【4.2 教科書と試験内容の質の向上】
【4.3 理論教育の強化と総合的な実践の推進】
【4.4 中医学TCM文化の普及を促進し、国際的な認知度を高める】
以上、引用終わり。
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最後の「アメリカの鍼灸教育システムのための4つの戦略」は、アメリカの鍼灸教育を「中国化」しようとするものであり、トランプ2.0の『新冷戦』の世界では、非現実的でした。
途中で「アメリカの鍼灸業界では一般的に、中医学TCM鍼灸は臓腑理論を過度に重視し、経絡や古典研究を軽視していると考えている(The U.S. acupuncture community generally believes that TCM acupuncture overemphasizes Zang-Fu theory while neglecting meridians and classic studies.)」という一文があり、「アメリカ鍼灸業界のほうが、日本よりも『中医学鍼灸』を的確に理解している!」と驚きました!
これからアジア以外の他国で特に欧米でも東洋医学の推進が図られています。
教育機関の設立が充実してくると、益々東洋医学の鍼灸が医療として有用になってくる先駆けです。


