【鍼灸EBM最前線:鍼のエビデンスの現状「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」(15)「脳卒中後遺症のうつ病(PSD)」】
2025年2月26日「鍼におけるエビデンスの現状:2017年から2022年の鍼のシステマティックレビューとメタアナリシスのレビュー」
82疾患が「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」です。
以下、引用。
【神経疾患】
「脳卒中後遺症」
「脳卒中後の失語症」
「脳卒中後の認知障害」
「脳卒中後の発声発語障害」
「脳卒中後の嚥下障害」
「脳卒中後の痙縮」
以上、引用終わり。
天津の石学敏(せきがくびん)先生の「醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)」は、水溝(人中)・内関・三陰交への刺鍼で有名ですが、天津以外では、他の治療法が使われているようです。
中国で、鍼灸は脳卒中に多く使われています。日本のヴェテラン鍼灸師の先生の御家族が脳卒中になった場合、鍼灸のリハビリを毎日されると、ものすごく回復される印象です。やらないよりはやったほうが絶対に良い印象があります。問題は保険制度や費用の問題だと思います。わたし個人は、脳卒中の患者さんは20年くらい前に経験しましたが、効果はあっても、費用や通院や家族の負担などの問題があります。個人的には、医療保険を使って訪問リハビリできると患者さんにとってはベストの選択だとは感じますね。
脳卒中の中でも、多くの症状があります。
個人的に良かったのは以下の2016年の論文です。
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2016年7月18日 浙江中医薬大学
「軽度または中程度の出血性脳卒中の患者の早期包括的リハビリにおける付加的効果:マルチセンター・ランダム化比較試験」
『頭鍼療法(とうしんりょうほう』の運動区、感覚区、体鍼の
肩髃、曲池,手三里、外関、合谷、梁丘、足三里、陽陵泉、三陰交、豊隆、解谿,太衝。
嚥下障害があれば、風池、翳明,天柱、目窓,廉泉、
認知障害があれば、風池、日月、本神、四神聡 を加えて使用しました。
250人を対象としたランダム化比較試験片麻痺、嚥下障害、認知障害、ウツは改善しましたが、上肢の機能はあまり改善しなかったと報告し、議論を展開しています。
以下、2016年論文より引用。
「『ヒューゲルメイヤー評価法(FMA:Fugl-Meyer Assessment)』で上肢(UE)と下肢(LE)を評価すると、上肢(upper extremity)と下肢(lower extremity)の運動機能で結果は異なっていた」
以上、引用終わり。
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この2016年の論文は、かなり現代中国の標準的な鍼灸治療を行い、細かく分析しています。鍼灸は、運動機能改善に注目されてきましたが、むしろ、認知機能やウツや不眠など精神神経症状のほうが有望なのではないか?という問いかけがあります。
2023年5月4日
「脳卒中後遺症のうつ病への鍼:システマティックレビューとネットワーク・メタアナリシス」
※「【結論】本研究の結果は、鍼単独または他の治療法との併用が、脳卒中患者のうつ症状の改善に効果的である可能性を示唆しています。」
2025年3月は湖南中医薬大学の論文は、脳卒中後うつ病への鍼の効果は腸内細菌叢を介してのものではないか?とメカニズムを推測しています。
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2025年3月
「脳卒中後うつ病:免疫調節を介した腸内細菌叢を介したバリア機能不全の探究」
日本脳卒中学会の『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕』では、脳卒中後うつ(PSD)に対して、「鍼治療を行うことを考慮しても良い(推奨度C エビデンスレベル中)」という記述があります。
脳卒中以外のヒトは、日本では100人に6人がうつ病です。
脳卒中を発症すると、日本の2017年の調査では24.1%が「脳卒中後うつ病(PSD)」でした。日本の脳卒中患者さんの3~4人に1人が、「脳卒中後うつ病(PSD)」となります。
2024年5月の『ランセット』論文によれば、3,864名の脳卒中患者を18年間、追跡調査すると、59.4%が「脳卒中後うつ病(PSD)」となっているという驚くべき数字もあります。
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2024年3月25日
「脳卒中後18年のうつ病の自然史:南ロンドン脳卒中登録簿に基づく人口ベースの研究」
※「うつ病の累積発生率は59.4%で、そのうち87.9%は脳卒中発症後5年以内に発生した。」
鍼灸師の家族が脳卒中になった場合、退院して自宅に帰られたら、鍼灸を受けていただいたら、かなり効果を出せると思います。医療保険の中で訪問が出来るなら、患者さんに貢献できるし、社会貢献できると思いました。
最近、「韓国政府は、なぜ、韓医学ガイドラインを整備したのか?」という疑問で韓国の記事を読んでいると、やはり保険診療のために標準化が必要だったという記述がありました。
「慢性疲労症候群(CFS)」を調べているとき、「なぜ、こんなに苦しんでいるヒトが多いのに、科学研究・エビデンスが少ないのか?」と疑問をもっていると、ある研究者が「慢性疲労症候群(CFS)の患者さんは、病院に来ることができない。自宅で消耗して、寝たきりになり、疲れ切って、病院に来てくれないから研究ができない」と書かれていました。
おそらく、出張治療による訪問鍼灸で、「脳卒中後うつ病(PSD)」や、「寝たきりのロング・コビッド」を減らすことができるなら、患者さんとご家族の苦しみを和らげることができるし、社会貢献もできるし、研究によってエビデンスができるなら医療保険の鍼灸の適応を広げられるかも知れません。


