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【鍼灸EBM最前線:鍼のエビデンスの現状「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」(14)「アルツハイマー型認知症」】

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【鍼灸EBM最前線:鍼のエビデンスの現状「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」(14)「アルツハイマー型認知症」】

【鍼灸EBM最前線:鍼のエビデンスの現状「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」(14)「アルツハイマー型認知症」】

2025年2月26日「鍼におけるエビデンスの現状:2017年から2022年の鍼のシステマティックレビューとメタアナリシスのレビュー」

 82疾患が「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患(Evidence of potential positive effect)」です。

以下、引用。

「【神経疾患】」「アルツハイマー型認知症」

以上、引用終わり。

 

 1906年にドイツの裕福な医師アロイス・アルツハイマー(Alois Alzheimer:1864-1915)が最初の認知症を報告し、その患者の脳を解剖して「老人斑プラーク」「神経原線維変化」を発見しました。

 1984年にカルフォルニア大学のジョージ・G・グレナー(George Geiger Glenner:1927–1995)らが「アミロイドβ(Amyloid beta)」を発見しました。

 1991年にイギリスのジョン・ハーディー(John Hardy:1954-)が「アミロイドβがアルツハイマー病の原因ではないか?」とする「アミロイド仮説(Amyloid hypothesis)」を提唱しました。

 2021年にアミロイドβを減らす薬「レカネマブ」がアメリカFDAで承認されます。

 2023年9月には日本で承認され、2024年に保険承認されます。

 2023年8月17日に、みすず書房からアメリカのハーバード大学などで脳研究・アルツハイマー病研究をしたカール・へラップ(Karl Herrup)先生の本『アルツハイマー病、失敗の構造』が出版されました。

カール・ヘラップ「アルツハイマー病研究、失敗の構造」

みすず書房(2023/8/17)

 2024年7月に、EUの欧州医薬品庁(EMA)は「レカネマブ」の効果は副作用リスクに見合わないとして非承認としました。

2024年7月26日『ロイター通信』

「欧州、エーザイ認知症薬『レカネマブ』の承認否定 副作用を懸念」

 2025年3月3日に、オーストラリア政府は「レカネマブ」の有効性が副作用のリスクを上回らないとして、非承認としました。

2025年3月3日『日本経済新聞』

「エーザイの認知症薬レカネマブ、オーストラリアで非承認」

アミロイドβが発見されたのが1984年代と40年前であり、「アルツハイマー病のアミロイドβ仮説」が提唱されたのが1991年と34年前です。

「アミロイド仮説(Amyloid hypothesis)」が揺らいでいるのが、2025年の現状のようです。

アルツハイマー型認知症について、調べて、興味深かったのは、アルツハイマー型認知症の「遺伝」の研究の問題です。

よく健康診断の有料オプションである「認知症の遺伝の検査」は「APOE(アポイー)遺伝子」の検査です。

デューク大学のアレン・ロージス教授(Allen Roses:1943-2016)が

1991年に脂質代謝に関連する「アポリポプロテインE(APOE:Apolipoprotein E)」に関連する遺伝子がアルツハイマー型認知症の発症に関連することを発見しました。

2014年『ネーチャー』ダイジェスト

「忘却の遺伝子:アルツハイマー病の有力な遺伝的リスク因子が20年余り前に報告されたが、研究者の多くはそれをほとんど無視してきた。しかし、その風潮がようやく変わろうとしている。」

※「Roses(アレン・ロージス)はアミロイド仮説を認めなかった。「アミロイドは、脳内で細胞が死んで萎縮が起こった結果プラーク内に蓄積される多くの物質の1つにすぎません。アミロイドが病因だとは全く思えませんでした」と彼は言う。」

故アレン・ロージス教授は、1991年の「APOE(アポイー)遺伝子」発見以来、アミロイド仮説をずっと批判していましたが、

1991年にイギリスのジョン・ハーディー(John Hardy:1954-)が「アミロイド仮説(Amyloid hypothesis)」を提唱したために全く注目されなかったようです。

アルツハイマー病の「ゲノム・ワイド関連分析」をするたびに新たな遺伝子が発見され、まだ、未開拓の分野である印象です。

2023年11月29日「アルツハイマー病におけるゲノムワイド関連研究:計量書誌学とヴィジュアライゼーション」

研究ホットスポットとして、アミロイドβ以外にタウ蛋白質や、ミクログリア神経炎症が挙げられています。

アルツハイマー型認知症への鍼のランダム化比較試験(RCT)はすべて中国で行われており、質は低いです。薬物療法より副作用は少なく、安全といえるとは思います。

2024年7月3日

「アルツハイマー病の認知障害に対する鍼治療の有効性と安全性:システマティックレビューとメタアナリシス」

「認知障害」への鍼の文献レビューは、研究の全体像を知るのに便利です。

2022年

「認知障害に対する鍼治療に関する1992~2022年の出版物の文献レビュー」

上記の文献レビューを読むと、やはりランダム化比較試験(RCT)の質は低く、動物実験とfMRIを用いた神経画像研究は参考になる印象です。

2023年2月

「アルツハイマー病に対する鍼治療の神経画像研究:システマティックレビュー」

13件の研究で

「帯状回(Cingulate gyrus:シンギュレイト・ジャイラス)」や、

「海馬(Hippocampus:ヒポキャンパス)」、

などが変化していることが判明していますが、

まだ、不明な部分が多いです。

2023年3月

「アルツハイマー病に対する鍼治療の効果とメカニズム:レビュー」

※「鍼治療の作用機序は海馬のシナプス可塑性の修復と密接に関係しています。このレビューではアルツハイマー病の病因 として、シナプスタンパク質、アルツハイマー病のシグネチャータンパク質、腸内細菌叢、神経炎症、神経細胞のアポトーシス、エネルギー代謝の変化 と アルツハイマー病治療における鍼治療の役割に焦点を当てています。」

動物実験では、海馬のシナプス可塑性や神経炎症、腸内細菌叢などの研究などメカニズム研究は、鍼灸研究の最前線という印象です。

2018年の以下の動物実験は、アルツハイマー病ではないですが、鍼が海馬のシナプス形成を促進することを証明した意味で画期的です。

2018年広州中医薬大学

「電気鍼は成人ラットでの認知障害を改善し、海馬のシナプス形成を促進する」

※「私たちの研究結果は、百会と印堂の鍼灸介入が新生児母子分離MSに曝露したラットモデルの学習・記憶能力の障害を有意に改善するという証拠を初めて提供した。」

2018年の以下の動物実験のシステマティックレビューは、灸による軽度認知障害の予防メカニズムとしてヒート・ショック・プロテインを指摘しています。

2018年「灸による軽度認知障害の予防効果とそのメカニズム:動物実験のシステマティックレビュー」

※「灸が、認知障害を予防するメカニズム:ヒート・ショック・プロテイン(HSP)の促進」

2019年の韓国の論文は、ミクログリア神経炎症の抑制によって、アミロイドβ減少をメカニズムとして提唱しています。

2019年韓国・韓医学研究院

「電気鍼は、アルツハイマー病モデル動物の神経炎症による認知機能障害を緩和する」

以下、引用。

「まとめると、われわれのデータによれば、電気鍼治療は、ミクログリアを介しての『アミロイドβ斑(Aβ plaques)』を減少させる。」

以上、引用終わり。

 現実問題として、現状では、アルツハイマー型認知症の鍼のランダム化比較試験(RCT)で結果を出すのは難しいです。

わたしは親が70代アルツハイマー型認知症と診断されましたが、専門医の先生に「40代頃から忘れっぽさなど症状が出ませんでしたか?」と聞かれました。

40代で発症したとして、1年に2%程度、認知機能が落ちていきます。

50代で20%の認知機能減少、60代で40%の認知機能減少、70代で60%の認知機能減少となります。認知機能60%減少なら、かなり深刻になります。

 病理を考えたら、70代でアルツハイマー型認知症と診断されるなら、脳の中はアミロイドβとタウ蛋白質の変性ができています。脳の中の神経変性が鍼をして無くなるか?と聞かれると無くならないと思います。

そこで、わたしは現実問題として、毎日、自分に鍼灸をすることで、神経炎症を抑制しようとしています。

1年2%の認知機能減少を、1年1%の認知機能減少という具体的目標を持っています。

1年間1%なら、50代で10%の認知機能減少、60代で20%の認知機能減少、70代で30%の認知機能減少となります。70代でその程度なら老化の範疇で許容できます。

しかし、30年単位で、アルツハイマー病に対する鍼のランダム化比較試験(RCT)を実施するのは不可能だと思います。

動物実験で、脳の神経炎症や腸内細菌など、メカニズム研究が今後の注目になると思います。

ただ、動物実験のメカニズム研究が活かされるのは、鍼灸師自身の「認知症予防」になるというのが個人的見解になります。

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