【鍼灸最前線:「機能性消化管障害」と「脳腸相関の病気】
2022年1月
「病態生理学に基づく機能性ディスペプシアに対する鍼治療の潜在的メカニズム」
「ローマ基準」を創った「ローマ財団」がノース・カロライナ州にあることを知らなかったです(笑)!イタリアのローマにあると何十年も思い込んでいました(笑)!
わたしが医学を学んだ1990年代は「NUD 非潰瘍性胃腸症」と言われていました。教科書には載っていないですが医学雑誌にたまに載っていました。
1989年にイタリア・ローマで国際消化器学会が開催され、ローマ大学消化器学教授のアルド・トルソリがデルファイ法を用いて、IBSの診断基準をつくる作業をはじめます。
1994年に「ローマⅠ(Rome I)」が出版されました。「機能性ディスペプシア」という言葉が使われ「NUD」に変わって使われるようになったようです。わたしはいまだに「NUD(エヌユーディー)」と言ってしまいます。
1999年の「ローマⅡ(Rome II)」では、「機能性ディスペプシア(FD)」の概念から、胸やけ・呑酸の「胃食道逆流症(GERD)」が独立します。わたしが「GERD(じーいーあーるでぃー)」と発音して、後進の方にポカンとされ「GERD(ガード)のことですか?」と聞き返されてた理由が理解できました。
2006年の「ローマⅢ(Rome Ⅲ)」が出版され、
「機能性ディスペプシア(FD)」が、「食後愁訴症候群(PDS:Postprandial Distress Syndrome)」と、「心窩部痛症候群(EPS:Epigastric Pain Syndrome)」に分類されました。
2013年に日本でも「機能性ディスペプシア」が保険病名に収載され、ゼリア新薬が世界初の機能性ディスペプシアの薬「アコマイド」が保険適用されました。
2014年に日本消化器病学会が『機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-機能性ディスペプシア(FD)』『機能性消化管疾患診療ガイドライン「過敏性腸症候群(IBS)」 』を出版します。
2016年に「ローマⅣ(Rome IV)」が出版されます。
「ローマⅣ(Rome IV)」では、「機能性消化管障害(FGID)」を「脳腸相関の病気」と表現しました。これは画期的です。
これは、腸内細菌の働きが急速に解明されはじめたことが関係しています。
特に腸粘膜の「タイト・ジャンクション・プロテイン」と「血液脳関門」の関係や、
迷走神経や交感神経と炎症の関係が急速に解明されてきました。
以下、引用。
「腸から脳への内臓感覚信号は迷走神経または交感神経求心性神経を介して伝達される。迷走神経一次求心性神経は、内臓感覚を孤束核(NTS)を介して視床下部、青斑核(LC)-扁桃体、中脳水道周囲灰白質(PAG)に伝達する」
「交感神経は脊髄視床路を経由して体性感覚野(SI/SII)、帯状皮質、島(insula)に伝達する」
以上、引用終わり。
2020年に日本消化器病学会から『機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)(改訂第2版)』が出版され、
2021年に日本消化器病学会から『機能性消化管疾患診療ガイドライン2021-機能性ディスペプシア(FD)(改訂第2版) 』が出版されました。