【鍼灸EBM最前線:鍼のエビデンスの現状「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」(11)「尿閉】
2025年2月26日「鍼におけるエビデンスの現状:2017年から2022年の鍼のシステマティックレビューとメタアナリシスのレビュー」
82疾患が「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患です。
以下、引用。
【泌尿器疾患】
Urological diseases
「尿閉(Urinary retention:ユリナリー・リテンション)」
Urinary retention
以上、引用終わり。
82疾患の39疾患目の「尿閉(Urinary retention)」について、わたしは臨床経験がないです。
調べたら、論文が多すぎて、大変でした。論文が多い原因は、中国の病院で外科手術後の「周術期の鍼(Perioperative acupuncture:ペリオペレイティブ・アキュパンクチャー)」として、かなり行われていることと、電気鍼(Electro-Acupuncture)が奏功することが多いからのようです。
「尿閉」は現代中国語では「尿潴留」です。
最初に確認できたのは2016年の「脊髄損傷後の尿貯留」の鍼のシステマティックレビューです。
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2016年4月「脊髄損傷による慢性尿貯留の鍼:システマティックレビュー」
※「【結論】システマティックレビューに基づけば、鍼は、『排尿後残尿量(PVR)』を減らす効果がいくらか有効かもしれない、そして、脊髄損傷後の『慢性尿貯留(CUR)』を改善するかもしれない。付け加えるなら、鍼は脊髄損傷後の『慢性尿貯留』の治療に安全であるかもしれない。しかしながら、エビデンスは高品質の臨床試験がないために限られており、大規模で、高度な方法論にもとづく高品質のランダム化比較試験が臨床研究において必要である。」
2018年
「データマイニングに基づく、脊髄損傷における尿閉の治療における鍼治療の臨床経穴選択ルールの研究」
基于数据挖掘探讨针灸治疗脊髓损伤尿潴留的临床选穴规律
程洁 陈霞 朱毅
《南京中医药大学学报》2018年1期
※从腧穴的选用频次来看,关元、中极、次髎、三阴交、中髎、气海、下髎、肾俞、上髎、阴陵泉、膀胱俞、足三里、会阳、水道、命门、曲骨16穴为针灸治疗脊髓损伤尿潴留的临床常用穴。
この感覚で、
産後尿閉、
子宮頸がん手術後の尿閉、
肛門手術後の尿閉、
脳卒中後の尿閉、
など、いろんな病気による手術や病気の後の尿閉の論文が大量にありました。
2022年「データマイニングに基づく、子宮頸がん手術後の尿閉の治療における鍼治療の臨床経穴選択ルールの研究」
基于数据挖掘分析针灸改善宫颈癌术后尿潴留的选穴规律
汪汐 龙子临 何欣
《针灸临床杂志》2022年11期
2022年「データマイニングに基づく、脳卒中後における尿閉の治療における鍼治療の臨床経穴選択ルールの研究」
基于数据挖掘技术探讨针灸治疗中风后尿潴留的选穴规律
柳永德钟晶晶康璇
《亚太传统医药》2023年7期
2024年「データマイニングに基づく、痔手術後における尿閉の治療における鍼治療の臨床経穴選択ルールの研究」
基于数据挖掘对针灸治疗混合痔术后尿潴留的取穴规律分析
崔灿 卢宇畅 周亮
《针灸临床杂志》2024年9期
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中国の医学界・学術界で、このようなコピー論文が文化的に流行しているのは知っています。
おそらく、病院で外科手術を受けた後の尿閉は、患者さんも困っているし、実験の参加者を集めやすく、尿量など客観的に改善を明示しやすく、しかも、鍼灸技術がなくても仙骨部に電気鍼をするだけであり、西洋医学でも「仙骨神経刺激法(Sacral Neuromodulation)」があるので、効果を予測しやすいです。しかも、メカニズムは未解明なので、若い研究者にとっては「研究しやすい・結果が出やすい」ので、修士号や博士号を取得するためには選びやすい分野なのだと思います。しかも、上記のデータマイニングに基づく論文は、AIを使って、すごく楽です。「習近平主席は学歴は小学校卒業なのに、北京の名門・清華大学の法学博士」という論文代筆疑惑をイギリスの新聞『タイムズ』に報道された「中国独特の学術界の文化」があります。
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2013年8月11日イギリスの『ザ・タイムス』
「オブジェクション異議あり!習近平さん、あなたは、本当に法学の学位(law degree)を得たの?」
しかし、おそらく、あまり鍼灸の技術の無い若い中医師が、仙骨部の決められたツボに電気鍼を決められたようにするだけですから、仙骨部への「TENS経皮性電気刺激」と、どう違うのか?と問うと、答えられない気がします。
日本のプロフェッショナル鍼灸師なら、反応を指で探し、深さもその患者さんに最適の深さに微調整して刺激量も調整するので、これは「鍼という技術」に価値はあると個人的には考えてしまいます。
これを考えてしまうのは、現在、西洋医学でも電気によって神経を刺激する方法が次々と現れているからです。
自分が患者さんの立場なら、外科手術後の尿閉は、つらいので、「ヴェテランの反応点を手で探して微調整する鍼治療」なら少々、高額でも受けたいです。
病院での無料での電気鍼の臨床試験に参加する形式でも、必ず実験の被験者になると思います。
それでは、1回5,000円の実費を払って、週3回の電気鍼を受けるか?というと費用対効果を考えると微妙です。決まったツボへの電気鍼なら、自宅で『仙骨部の皮膚に電極を張り付けて「TENS」で電気刺激する「経皮性の仙骨ニューロモデュレーション」を選ぶ可能性は高そうです。
患者さんの立場に立つなら、安価な家庭用の『ニューロモデュレーションデバイス』はあったほうが良いと思います。
耳鍼でも、「この病気には、この刺激部位」という固定的な「経皮性耳介迷走神経刺激(ta-VNS)」のデバイスが安価に家庭用にあり、毎日刺激できるなら、患者さんにとってメリットは大きいです。また、アメリカでは実質的に「誰でもトレーニング無しで出来る『NADAプロトコル』や、衛生兵が短時間の研修で出来る『戦場鍼(Battlefield Acupuncture)』」といった「普及用の鍼灸技術」が登場しています。2025年のプロフェッショナル鍼灸師の技術は、西洋医学のニューロモデュレーション電気刺激デバイスや、「アマチュアでも、誰でも出来る、簡単な普及用の技術」といかに差別化するか?(いかにコミュニケーションの中で良さを理解してもらうか?)が大きな問題になってくると感じました。