【鍼灸EBM最前線:鍼のエビデンスの現状「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」(9)「勃起障害(ED」】
2025年2月26日「鍼におけるエビデンスの現状:2017年から2022年の鍼のシステマティックレビューとメタアナリシスのレビュー」
82疾患が「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」です。
以下、引用。
【泌尿器疾患】
「勃起障害(ED:Erectile dysfunction)」
以上、引用終わり。
関西にある古い漢方屋さんには、鹿角やオットセイやタツノオトシゴ(海馬)やマムシ(反鼻)が飾ってあるお店があります。EDは、江戸時代の漢方の大きな割合を占めたと思います。徳川家康はオットセイの陰茎である漢方生薬「海狗腎(かいくじん)」を愛用し、11代将軍・徳川家斉は松前藩から献上されたオットセイの陰茎を愛用し53人の子どもをもうけて、「オットセイ将軍」と呼ばれました。
1990年代に心臓病の薬として一酸化窒素を放出して血管を拡張する『ホスホジエステラーゼ阻害薬』を開発しましたが、臨床試験で心臓病には効かないがEDには効果があることが分かり、1998年にバイアグラが発売され、結果として世界中で死者が続出しました。
保険は使えず、自由診療であり、現在は美容クリニックなどもオンライン診療で遠隔処方されることが多いようです。2018年に『ED診療ガイドライン』が出版されていますが、鍼や補完代替医療の記述は存在しません。
現在、厚生労働省は、ドラックストアで「ED治療薬」を処方せん無しでOTCで買えることを検討中です。
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2024年11月26日『日本経済新聞』
「ED治療薬、処方箋なしで購入解禁を検討 厚労省」
2016年の鍼のシステマティックレビューでは、鍼のエビデンスは不十分です。
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2016年
「EDに対する鍼治療:システマティックレビュー」
※「【結論】鍼治療のみでEDが改善することを裏付ける証拠は不十分であり、利用可能な研究では鍼治療の特定の治療効果を示すことができなかった。」
2019年3月15日
「EDの鍼:システマティックレビューとメタ・アナリシス」
※「【結論】質の低いエビデンスでは、主に『心因性ED(psychogenic ED)』の患者に対する補助治療として鍼治療が有益な効果をもたらすことが示されています」
2022年
「ED患者に対する鍼治療の有効性:レビュー」
※「脊髄勃起中枢はT12-L1セグメントに位置し、反射勃起中枢はS2-S4セグメントに位置しています。」
「データマイニング技術に基づくEDの鍼治療におけるツボ選択ルールの分析」
EDは、「心因性ED」と「器質性ED」があります。
また、抗うつ剤の副作用などの「薬剤性ED」も多いようですが、これは医師の先生の介入が必要です。
「器質性ED」の血管性EDに対して、鍼は一酸化窒素などで血流は改善します。「糖尿病性ED」の神経障害などにも、鍼は神経再生で一定の効果はあると推測はできます。視床下部~脳下垂体にも働きかけるので、一定の効果は推測できます。
ただ、患者さんの立場に立つと、まずは医師の診察を受けて薬物療法を受けられると推測できます。オンライン診療もあり、薬局での販売などOTCが認可されたら、その傾向はさらに強くなると推測します。薬物療法では30%以上の患者さんが薬物の効果が出ないようなので、もし鍼灸が求められるなら、副作用を恐れる方か、このような方だと推測はできます。
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2006年
「PDE5阻害剤が効かない場合のEDの治療」
※「大規模な多施設臨床試験では、さまざまな病因と幅広い重症度の勃起不全に対するこれらの薬剤の有効性と忍容性が示されていますが、患者の30~35%は効果がありません。」
現代日本の鍼灸臨床は、つねに、西洋医学との相対的な関係が重要だと思います。