【鍼灸EBM最前線:鍼のエビデンスの現状「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」(7)「腎疝痛】
2025年2月26日「鍼におけるエビデンスの現状:2017年から2022年の鍼のシステマティックレビューとメタアナリシスのレビュー」
82疾患が「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」です。
以下、引用。
【腎臓病学】
「腎疝痛」
以上、引用終わり。
2022年7月4日『エビデンスに基づく補完代替医療』
「成人の尿路結石からの腎疝痛への鍼の効果と安全性」
以下、引用。
「【結論】成人の尿路結石による急性腎疝痛の手技鍼治療は、利用可能なエビデンスにより、薬物療法と同じ程度の効果があり、鍼が迅速な効果があるという利点がある。」
以上、引用終わり。
『日本老年泌尿器科学会誌』に志室(BL52)や京門(GB25)、腎兪(BL23)などの指圧に鎮痛効果があることを石井クリニックの石井泰憲先生が報告されています。
↓
2019年「尿管結石の疝痛で『志室』のツボ指圧は瞬時に有効な鎮痛効果が認められた」
石井泰憲
『日本老年泌尿器科学会誌』32巻1号153ページ、 2019年05月20日
1955年「尿路結石による疝痛に対する鍼灸治療」
野田 とみ『日本鍼灸治療学会総会論文集』1955 年 4 巻 1 号 p. 124-126
「腎疝痛」の知識は、腰痛の鍼灸臨床の際に重要だと個人的には思います。
特に病歴の問診と、「肋骨脊柱角の圧痛」です。
アメリカの偉大な医師マーフィー(John Benjamin Murphy:1857-1916)が腎結石に「肋骨脊柱角」を拳で叩打する、
「マーフィー・パンチ徴候」
を提唱しています。
わたしも、患者さんが「ギックリ腰・急性腰痛」を主訴として来られた際に「マーフィー・パンチ」が陽性となり、泌尿器症状の異常もあり「内科を受診して検査してもらえますか?」とお伝えして、腎結石だったことがあります。腎結石は「水腎症」のリスクもあります。
10年ほど前に経験した急性腰痛の女性は、脈診したら手が熱かったために体温を測って38℃あり(本人は腰痛が酷く自覚なし)、腎臓を叩打して中に響き「マーフィー・パンチ徴候」が陽性のため、すぐに内科を受診してもらったところ「腎盂腎炎」でした。しかも、ほとんどの「急性腎盂腎炎」は膀胱炎からの上行性感染なのですが、この方は膀胱炎はなく、非常に珍しい症例といわれました。
第12肋骨の触診は第2腰椎棘突起の高さをとるためにも腰痛臨床の必須スキルですが、わたしはフェザータッチで第12肋骨を示指と中指ではさみ、第12肋骨をたどって第12胸椎棘突起を判別する触診をよくやります。慣れたら1~2秒で「肋骨脊柱角」の位置がとれます。「肋骨脊柱角」を素早く見つけるには必要なので練習して出来るようになりましたが、研修指導していると技術的難易度が高いようです。
「肋骨脊柱角の圧痛」や「マーフィー・パンチ徴候」は、わたしは個人的には「腰痛の鍼灸臨床のエッセンシャル・スキル」と思っているのですが、この機会にエビデンスを調べました。
2011年 湘南鎌倉総合病院
「救急外来における『肋骨脊柱角の圧痛』の診断精度」
※「【結論】『肋骨脊柱角の圧痛(CVAT)』は、発熱患者の腎盂腎炎および無熱患者の急性閉塞性尿路疾患の診断において、高い特異度と陽性尤度比を示しました」
※「感度は低いものの『肋骨脊柱角の圧痛(CVAT)』は救急外来での腎盂腎炎および閉塞性尿路疾患の診断に有用な手法です。」
↑
腎結石・尿路結石の痛みは「急性腹症」の一種なので、わたしは「疑わしきは精密検査」の方針でスクリーニングの手段としてのみ研究しています。