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【鍼灸EBM最前線:鍼のエビデンスの現状「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」(5)「透析皮膚掻痒症=尿毒症性掻痒症】

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【鍼灸EBM最前線:鍼のエビデンスの現状「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」(5)「透析皮膚掻痒症=尿毒症性掻痒症】

【鍼灸EBM最前線:鍼のエビデンスの現状「鍼がポジティブな効果を出す可能性が高い疾患」(5)「透析皮膚掻痒症=尿毒症性掻痒症】

 2025年2月26日「鍼におけるエビデンスの現状:2017年から2022年の鍼のシステマティックレビューとメタアナリシスのレビュー」

2022年1月

「尿毒性掻痒症の鍼:システマティックレビューとメタアナリシス」

※「結論として、鍼治療は、血液透析を受けている尿毒性掻痒症患者にとって尿毒性掻痒症の症状を効果的に改善できる安全な治療法であり、血液透析と鍼治療を併用すると、血液透析単独よりも尿毒性掻痒症の症状を改善する効果が高いことが示唆されました」

 透析皮膚掻痒症(尿毒性掻痒症)の病理については、以下の論文が秀逸です。

2021年

「慢性腎臓病関連の皮膚掻痒症:レビュー」

 透析皮膚掻痒症(尿毒性掻痒症)の病理について、定説は無く、多くの仮説があるのですが、TRPV1や、κオピオイド受容体、自由神経終末からのサブスタンスPの放出など、鍼灸の治効機序と関係のありそうなキーワードが頻出しています。

 個人的にもっとも興味深かったのは、透析皮膚掻痒症に対して、光線療法(Phototherapy:フォトセラピー)が有効であることです。

 偉大な皮膚科医でアメリカ皮膚科学会の会長も務めたバーバラ・A・ギルクレスト博士が、1979年に、透析皮膚掻痒症に対して、紫外線B(UVB:Ultraviolet B)が有効であることを最初に報告しました。

1979年 バーバラ・A・ギルヒクレスト

「尿毒症性掻痒症に対する紫外線療法:長期的結果と作用機序の可能性」

2018年11月

「光線療法の痒み止め効果」

オーストリア・グラーツ医科大学2018 Nov 30:5:333.

 

※「(表皮の下、真皮の最上部の)機械侵害と温熱に感受性の『ポリモーダル(polymodal)』な神経線維が見られる。これらは末梢から掻痒信号を取り込み、それを背根神経節(DRG:Dorsal Root Ganglia)の細胞体と中枢投射を介して脊髄(Spinal cord)、さらには脳(Brain)に伝達します」

末梢レベルではTRPV1や自由神経終末からのサブスタンスP放出が関係し、中枢レベルでは『ポリモーダル受容器』から、脊髄神経節から脊髄を通して脳に伝達されて脳から作用するわけですから、光線療法(phototherapy)の透析皮膚掻痒症へのメカニズムは鍼灸と非常に似ている印象を受けます。

 

これらの研究において、益々鍼治療のメカニズムが解明され、必要とされることが増えてくることは大変うれしいことです。