【アメリカ鍼灸最前線:オレゴン州のオピオイド危機に対する耳鍼の法律】
2025年2月18日オレゴン州の医療系メディア『ルンド報告書』
「オレゴン州議会は、オピオイド薬物中毒クライシスを緩和するために鍼に注目する」
『ファイブ・ニードル・プロトコル(NADAプロトコル)』に関する研究はまだ結論が出ていないが、支持者たちは、特に社会的に疎外されたコミュニティで依存症に苦しむ人々を助ける低コストの方法を提供すると主張している。
以下、引用。
「オレゴン州では行動保健サービスが不足しており、鍼灸師や支援団体は『ファイブ・ニードル・プロトコル(NADAプロトコル)』の利用拡大を望んでいる。これは1970年代に開発された鍼治療技術で、一部の研究では薬物への渇望を軽減する効果があると示唆されている。」
「オレゴン州議会は『法案2143号(House Bill 2143)』を検討している。この法案は、鍼灸師でなくても、合法的に認可されている研修プログラムを修了していれば、『ファイブ・ニードル・プロトコル(NADAプロトコル)』を施すことを認めるものだ。アメリカ50週の半数以上の州ではすでに同様の法律が施行されている。 」
「『ファイブ・ニードル・プロトコル(NADAプロトコル)』の有効性に疑問を呈する研究もある。しかし、 アリゾナ州と ヴァージニア州でこの治療の適用範囲を広げる最近の法案は、両州議会で簡単に可決された。 」
以上、引用終わり。
1973年に香港の脳神経外科医で鍼麻酔に影響された温祥来(Wen Hsiang-Lai:1923-2017)がヘロイン中毒の耳の電気鍼を発表しました。
1973年に年にニューヨーク、サウスブロンクス・リンカーン病院の医師マイケル・スミス(Michael O. Smith)が、ドラッグ依存症へのメサドンの代わりに中国式の耳鍼を用いました。最初は中国式耳穴の「肺」のツボのみを使っていたが、精神安定作用のある中国式耳穴の「神門」が加えられ、試行錯誤して、現在のような「肺」「神門」「交感」「肝」「腎」の5穴に刺鍼する「NADAプロトコル」の原型となりました。
1985年にマイケル・スミス医師がNADA(National Acupuncture Detoxification Association)を設立します。
2005年ハリケーン・カトリーナの際に鍼師ダイアナ・フリード(Diana Fried)先生が『国境なき鍼師』を組織し、ルイジアナ州でトラウマ軽減のためのNADAプロトコル活動を行いました。
2007年にルイジアナ州は州法で「他州のライセンスでもNADAの認証を受けた『アキュパンクチャー・デトキシフィケーション』の専門家は緊急時のボランティア活動の臨床ができる」という法的な規制緩和を行いました。
『国境なき鍼師』の善行が、法のカベを破り、これが歴史的ターニングポイントだったようです。
2019年にバーモント州がNADAプロトコルの規制緩和をはじめます。鍼灸師以外でもNADAプロトコルの使用が可能となりました。バーモント州の法務担当者のコメントを読んで、心から感動しました。
「耳鍼で稼いでいる鍼師なんて、ほとんどいない。「ただ苦しんでいる仲間を助ける民間療法があるだけだよ」。
2019年に、コロラド州が刑務所内で、トレーニングを受けた人間(刑務所の看守や心理学者)による」NADAプロトコルができるように法律の規制緩和を行いました。
2019年に、ミシガン州は、州法HOUSE BILL No. 4710でNADAプロトコルを法的に認めます。
2019年に、ウエストヴァージニア州(State of West Virginia)が『NADAプロトコル』 と『戦場鍼プロトコル』という2種類の耳鍼を使える『アキュデトックス・スペシャリスト』という耳鍼限定の資格をつくりました。看護師、ナース・プラクティショナー、フィジシャンアシスタント、ソーシャルワーカー、セラピスト、サイコロジスト、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、救急救命士(EMT)およびトレーニングを受けた刑務所の看守が耳鍼を使えます。
2019年にメイン州が『アキュパンクチャー・デトックス・スペシャリスト』という耳鍼限定資格をつくりました。
2022年にアリゾナ州が『SB1255法』で耳鍼限定資格『アキュパンクチャー・デトックス・スペシャリスト』を合法化しました。
2024年にヴァージニア州が『HB 1278法』で「ファイブ・ニードル・プロトコルを使う耳鍼」を医療免許や資格に関係なく、誰でも「耳鍼NADAプロトコル(five needle protocol)」が出来るというラディカルな法律が合法化されました。
2025年に、このような流れの中で、オレゴン州が『法案2143号(House Bill 2143)』で、耳鍼を、鍼灸師でなくても、誰でもできることを認めることを議会で議論しています。
今回の法案は、オレゴン州のリサ・ローレダー先生が創った『ピープルズ・オーガニゼーション・オブ・コミュニティー・アキュパンクチャー』が提案したようです。
リサ・ローレダー先生は、バングラディシュのノーベル経済学賞のモハメド・ユヌスのグラミン銀行やマイクロクレジットに影響を受けました。手頃な価格の鍼治療をコミュニティに提供し、鍼師たちに持続可能な雇用を提供し、奨学金やマイクロ貸付制度、POCAメンバーの鍼灸師への財政支援や若い鍼師への教育プログラムの提供を理念としています。
パンクロッカーみたいな『パンク鍼師』を自称するリサ・ローレダー先生の鍼灸学校POCA Techの理念は「鍼は世界を変えることができる」です。
これからも鍼灸の需要が増加して、薬が主役から自然治癒力を引き出す東洋医学が益々好まれてくる時代が来るような気がしてなりません。


