【鍼灸研究最前線:温灸器の素材と、灸から放射される赤外線】
2024年6月30日 北京中医薬大学
「フーリエ変換赤外分光法を用いた、異なる材料で作られた灸器具から放射される赤外線の分析」
現在、中国で販売されている温灸器で、
「段ボール」、
「シリカゲル・シリコン」
「陶器」
「木製」
を比較しました。
以下、引用。
「灸器の本体は通常、木材、陶磁器、段ボール、シリカゲルなどで作られています。赤外線の強さは製造材料の違いと密接に関係しています。絶対零度以上の温度の物体はエネルギーを放出することができます。灸棒の燃焼中に発生する目に見えない赤外線は、その放射スペクトルの大部分を占めており、その強度は赤色光から遠赤外線まで変化し、主に近赤外線の波帯にあります」
以上、引用終わり。
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熱の伝達のメカニズムとして、
伝導
対流
放射
があります。
伝導は、熱が高温から低温に移動する現象であり、冷たいアイスクリームをスプーンで食べると手の熱がスプーンを伝導してアイスが溶けやすくなります。素材によって熱伝導率が変わります。金属は触ると「ヒヤっ」とします。金属の熱伝導率は大きいために熱を奪います。棒灸を金属の火消しツボに入れていると、金属火消しツボは、すぐに物凄く熱くなります。木材の熱伝導率は低く、触ると「温かい」感じがします。棒灸を入れた木製の棒灸火消しツボは、金属火消しツボと比較すると温度が低く、触っても大丈夫です。
対流は、空気や水の流れによる熱の移動です。サウナ・ルームの高い位置は熱い空気が対流によって流れるので熱くなります。
放射=輻射は、赤外線など電磁波の放射であり、伝導や対流とは異なります。赤外線サウナは照射機の近くだと熱くなります。赤外線はたいていのものから出ているので、暗闇でも見える「赤外線カメラ」「サーモグラフィ―」として利用されています。物質によって熱放射のエネルギー吸収率が違います。
棒灸を「赤外線カメラ」で見たら、棒灸を中心に赤外線が放射されているのが視覚化できるはずです。もちろん、皮膚の上の八分灸も、赤外線と赤色光がツボに向かって放射されているわけです。
今回の実験は、灸の熱放射=輻射による赤外線の吸収が素材によって違うのかを実験しました。
↓以下、引用。
「この実験研究では、4種類の灸器の灸の適用過程で、セラミック灸器の外部構造が最も高温になることがわかりました。この実験結果と合わせると、セラミック陶器灸器の赤外線放射が弱い理由は、灸棒の燃焼によって放出されるエネルギーが外部構造によって過剰に吸収され、その結果、外部構造によって熱エネルギーまたは光エネルギーが優先的に吸収されるためではないかと推測されます。その結果、セラミック陶器灸器のエネルギー損失は他の灸器よりも大きくなりました。」
「臨床治療では、段ボール灸器の治療効果は、セラミック製の灸器の治療効果よりも優れている可能性があります。」
以上、引用終わり。
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棒灸から放射・輻射される赤外線は、セラミック陶器に吸収されるために、セラミック陶器灸器の外殻は熱くなり、セラミック陶器灸器の底面・皮膚面の温度が下がります。個人的には、そっちのほうがヤケドのリスクが下がって安全なので、セラミック陶器灸器のほうが優れていると感じたのですが、中国の論文の著者の見解は正反対で「段ボール温灸器」のほうが優れているという見解でした(笑)。価値観の違いとしか言いようがないです。
灸の赤外線は、陶器セラミックに吸収されることで、皮膚面の温度は下がります。灸の周りの環境が灸の体感温度を変化させるわけです。
ここで、わたしが個人的に思うのは、八分灸をしていると、皮膚面の反応が変化した瞬間に、「艾柱の火の燃え方が変化する現象」です。これは「わたし一人の思い込みかなー」と思っていましたが、信頼する灸を得意とする鍼灸師の先生も同じことを感じていました。皮膚の湿度が低かったり、カサカサだと赤外線や光線の吸収が変わります。八分灸を加えることで、皮下でCGRPがでて毛細血管が拡張し、皮膚表面の「しっとり感」が変化すると、皮膚の赤外線(電磁波)の吸収率も変化するはずです。そして、ツボの皮膚表面の電磁場の変化が、「艾柱の火の燃え方が変化する現象」に影響するのではないか?と感じました。わたしは、八分灸の場合、「火の燃え方が突然、変化する現象」と、八分灸を消す際の右手の母指と示指が皮膚に触れた感覚で、「灸を止めるタイミング」を判断しています。
以下の2013年の中国の論文は良い論文でした。
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2013年
「灸のメカニズム:古代理論と現代研究」
※「灸、隔物灸、人体のツボの赤外線放射スペクトルを分析・比較したところ、附子灸、ショウガ灸、ニンニク灸で分けた3種類の間接灸のスペクトルと、ツボを統合したスペクトルには驚くべき一貫性があることがわかりました。どちらも放射のピークは7.5μm付近にあります 」
スペクトルはそれらとはまったく異なり、温める機能は伝統的な灸よりもはるかに低く、棒灸とツボの赤外線放射スペクトルにも大きな違いがありました」
※「結果は、伝統的な間接灸の治療効果において、間接灸と経穴の赤外線の共鳴振動が重要な役割を果たしており、キュウリ灸・ニンジン灸は灸の赤外線特性の点で伝統的な附子灸・ショウガ灸・ニンニク灸に置き換えることはできないことを示した」
※「(灸の)近赤外線が身体に照射されると、皮膚で反射する光は比較的低く、エネルギーは皮膚の約 10 mm の深さまで伝達され、組織に到達して吸収されます」
※「近赤外線は細胞の代謝を活性化させることもできます。光電効果と光化学反応によって生成されたエネルギーは神経体液系を通過し、エネルギー不足の病理細胞を活性化し、さらに体の免疫機能と神経機能を調整します」
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まず、附子灸・ショウガ灸・ニンニク灸などの伝統的な隔物灸は、キュウリ灸・ニンジン灸とは全く異なりました。
また、灸から放射される近赤外線は、まるで鍼のように1cm皮膚の下に入り、「光電効果」を起こし、連鎖反応的な身体の変化を起こしていきます。


