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【鍼灸研究最前線:ツボのマイクロ環境と経穴の過敏化】

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【鍼灸研究最前線:ツボのマイクロ環境と経穴の過敏化】

【鍼灸研究最前線:ツボのマイクロ環境と経穴の過敏化】

202427日 天津中医薬大学実験鍼灸科学研究センター

「経穴マイクロ環境における求心性神経を介した鍼鎮痛効果とメカニズム」

以下、引用。

「ツボにはこれらには、一過性受容体電位チャネル受容体(TRP)ファミリーや酸感受性イオンチャネル3ASIC3)などの機械感受性イオンチャネルが含まれます。

 

ASIC3 は主に皮膚や筋肉を支配する線維に位置し、酸や機械的反応を媒介することが知られていますが、TRPV1 イオンチャネルは感覚線維と C 線維で高度に発現しています。また、ある研究では、ASIC3 ノックアウト マウスは局所的な 0.3 mA 強度の EA に対する鎮痛効果が低下し、TRPV1 ノックアウト マウスは遠位の 1.0 mA 強度の EA に対する鎮痛効果が低下したことがわかりました。」

 

「これらの知見は、低強度の『電気鍼(EA)』の部分的な鎮痛効果は線維上の ASIC 3 受容体によって媒介され、高強度の『電気鍼(EA)』の全身鎮痛効果は TRPV1 受容体上の線維と C 線維によって媒介される可能性があることを示唆しています」

「病的なストレス条件下では、関連する経穴は、疼痛閾値の低下を含むさまざまな変化を起こします。この『サイレント(silent)』状態から『アクティブ(active)』状態への変化は『経穴感作』と呼ばれ、経穴選択の重要な指標です。」

以上、引用終わり。

わたしは、正直、この論文の著者の論旨と見解には、まったく同意していないです。

しかし、この論文は非常に面白い視点をたくさん提出しており、そこは優れています。

一つは『ツボの過敏状態』です。ツボは『サイレント(silent)』状態と『アクティブ』状態があります。

これは、中国では2000年代以降に「熱敏灸(ねつびんきゅう)の研究で言われ始めました。

経穴がサイレントな「静默相」と経穴が過敏化しアクティブとなった「激活相」の概念です。

 

2000年代のわたしは、熱敏灸の研究を読んで、トリガーポイントの

「潜在トリガーポイントと「活性化トリガーポイント」を思い浮かべました。

 

アメリカ政府NIHのトリガーポイント研究者JP・シャー(Jay P Shah)博士が2005年からマイクロダイアリシス・システムを使って僧帽筋の活性化トリガーポイントの組織液を採取し、鍼刺激後と比較しました。

2005年 JP・シャー(Jay P Shah)博士

「ヒト骨格筋の局所生化学的環境を測定するための生体内微量分析技術」

 

「活性化トリガーポイントMTrPの近傍でSP(サブスタンスP)CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)のレベルが有意に上昇していることを発見した」

 

SP(サブスタンスP)CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は両方とも、ローカル・トゥッチの後に大幅に低下しました。」

 

「活性化トリガーポイントMTrPsの被験者では、TNF-αIL-1βのレベルが有意に上昇していることがわかった」

さらに、トリガーポイント研究者JP・シャー(Jay P Shah)博士は2008年に画期的な論文を発表します。

2008

「痛みや炎症に関連する生化学物質は、活性化筋膜トリガーポイント(Active

僧帽筋に活性化トリガーポイントをもっている被験者は、僧帽筋から採取した組織液でTNF-αIL-1βのレベルが最も多かったです。

さらに僧帽筋トリガーポイントをもっている被験者は、もっていない健康人と比較して、下腿の腓腹筋の組織液のTNF-αIL-1βのレベルが多いことが判明しました。

つまり、活性化されていない「潜在トリガーポイント」も、低いレベルの炎症状態である可能性があります。

これは、最近、注目されている「慢性全身性の低いグレードの炎症状態」と一緒に考えるべき問題だと思います。

 

わたしは、この実験結果に衝撃を受けました。そこから、炎症をしめす腫瘍壊死因子TNF-αとインターロイキンIL-1βと鍼に関する論文を精査し、さらに「慢性全身性の低いグレードの炎症状態」を示す「NFκB」と鍼の関係を研究し続けました。

 

20241月に、同じくマクロダイアリシス・システムでトリガーポイントの鍼の後の局所の組織液の乳酸を調べたアルバート・モラスカ博士から、批判のレターがありました

20241月に、JP・シャー博士は、モラスカ博士の批判に対して、回答のレターを書かれました。

20241

「「痛みと炎症に関連する生化学物質は、活性筋膜トリガーポイントの近くと離れた部位で増加している」という編集者への手紙への回答」

トリガーポイント研究者JP・シャー博士は、活性化トリガーポイントでは、pH4.2という、初見では信じがたい酸性環境であったことをあらためて書かれています。

つまり、トリガーポイントの局所は、かなり「物理化学的に異常な状態」が起こっています。「トリガーポイントは脳の中の幽霊(ゴースト・イン・ザ・マシーン)」という意見が2000年代にありましたが、この実験結果を見る限り、間違いのようです。

いまでは信じがたいですが、「腰痛は、脳の中の幽霊なので、認知行動療法でぜんぶ治る」みたいな極論もありました。わたしは当時、「じゃあ、わたしが毎日触っている、腰痛患者の局所のヌルヌル・ベトベト・コリコリした硬結は何なんだ?」と激しく反発したことを覚えています。

さらに、ポーランドのエルジビエタ・スコルプスカ博士の実験で、活性化トリガーポイントも、潜在性トリガーポイントも、脳・視床・扁桃・自律神経など「中枢感作(Central Sensitization)」の要素が否定できないです。

ここで、問題になってくるのは、

「慢性全身性の低いグレードの炎症状態」による局所の問題、「中枢感作(Central Sensitization)」の両方です。

「潜在トリガーポイント」と「活性化トリガーポイント」、あるいは、経穴の過敏化という問題とからみあっているように、個人的には感じます。

 

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