株式会社 千乃

【科学の最前線:トリガーポイントと中枢感作の実験】

お問い合わせはこちら インターネット予約 初診時の問診票

【科学の最前線:トリガーポイントと中枢感作の実験】

【科学の最前線:トリガーポイントと中枢感作の実験】

2023年2月2日 ポーランド・ポズナン医科大学

エルジビエタ・スコルプスカ(Elzbieta Skorupska PhD)博士

「中枢感作の潜在的な客観的徴候:小殿筋によって誘発される関連痛は、侵害刺激(鍼刺激)によって引き起こされる病的な自律神経反応と一致する」

 東欧ポーランドの鍼研究・トリガーポイント研究が急速に発展して、超ハイレベルに達していたのは認識していたのですが、エルジビエタ・スコルプスカ博士の研究は、凄い!です。

 小殿筋の「潜在性トリガーポイント」を刺激して、トリガーポイント刺激による血管の血流を観察するためだけに開発した新技術「スコルプスカ・テスト(Skorupska Protocol test®)」を行いました!!!

以下、引用。

「現在、疼痛専門医の間では、トリガーポイントが中枢性現象か末梢性現象か、また、筋.筋膜性疼痛症候群(MPS)の発症メカニズムは何かという点について激しい議論が交わされている」

「1つの仮説では、『中枢感作(CS:Central Sensitization)』プロセスが『トリガーポイント(TrP)』の発症に関与しているという。この理論は、『トリガーポイント(TrP)』によって引き起こされる関連痛(二次性痛覚過敏)と、『トリガーポイント(TrP)』の影響を受ける筋線維内の圧痛閾値の低下(一次性痛覚過敏)という2つの現象によって裏付けられている。関連痛の存在に依存する交感神経活動も実証されている。このことは、さらに、『中枢感作(CS)』が『トリガーポイント(TrP)』の発症に関与していることを裏付けている 」

「もう一つの理論では、トリガーポイントは単なる侵害受容性の末梢感覚であると仮定し、その臨床的重要性を否定するか、存在自体に疑問を呈している」

「関連痛内の異常な自律神経活動を調べ、『トリガーポイント(TrP)』を客観的に確認するために、新しい診断法である『スコルプスカ・プロトコル・テスト』が最近確立されました。」

「小殿筋内の活性化トリガーポイントの刺激は、下肢に広がる遠隔血管運動反応を引き起こしました。さらに、自律神経の統合機能の生理学に関する現在の知識によると、下肢の血管運動反応の誘発には、脊髄および/または視床下部レベルでの自律神経活動が必要です。この事実は、『トリガーポイント(TrP)』経路機構への中枢神経系の関与の仮説をさらに裏付けています。」

「しかし、関連痛は潜在性トリガーポイントを持つ無症候性で痛みのない健康な被験者にも典型的であり、機械的な筋肉圧迫や針の刺激によって引き起こされる可能性があることを忘れてはなりません[。Ambite-Quesadaらによる最近の研究では、定量的感覚検査技術を適用することで、潜在性トリガーポイントからの関連痛に中枢感作が関与していることが裏付けられています 。しかし、関連痛が中枢感作の兆候であるという仮定に基づくと、潜在性トリガーポイントが活性トリガーポイントと同様に関連痛ゾーン内で病的な自律神経反応を引き起こす可能性があるかどうかを明らかにする必要があります。」

以上、引用終わり。

 

そして、健康で痛みがない被験者で、小殿筋に『潜在性トリガーポイント(LTrPs:Latent Trigger Points)』を持つ被験者20人と、『潜在性トリガーポイント(LTrPS)』をもっていない被験者30人を鍼で刺激し、「スコルプスカ・テスト」で血流量を観察し、サーモグラフィーで温度を観察しました。

以下、引用。

「スコルプスカ・テストの陽性結果に必要な増幅血管拡張は、『潜在性トリガーポイント(LTrPs:Latent Trigger Points)』被験者のみで確認されました。コントロール グループの 70% は血管運動反応を示さなかった」

「潜在性トリガーポイントの病理学的自律神経反応は、スコルプスカ・テスト®を使用して以前に検査された活性トリガーポイントの特徴と類似しています。しかし、潜在性トリガーポイント分析の場合に観察された現象は、サイズが異なっていました。潜在性トリガーポイントは、観察された増幅された血管拡張のサイズが小さく、鍼刺激によって発生する関連痛ゾーン内の温度上昇が低いことが特徴でした。」

「上記の仮説に加えて、Harte らは『中枢感作(Central Sensitization)』をトップダウンとボトムアップの 2 種類に区別すべきであると提唱する新しい概念も提唱している。

1 .線維筋痛症に典型的な重度の感覚がより多く、主な問題は脊柱上部構造(=脳神経系)に由来する可能性があり、症状は不可逆的である。

 

2 .プロセスを逆転させる可能性があると定義される。このボトムアップ型の『中枢感作』は、過剰な有害な末梢入力による痛みを特徴とし、最終的には中枢神経系が痛みを知覚するほどに敏感になる。

Harte ら [ 36 ] は、時間の経過とともに、末梢からの駆動力がなくても痛みが知覚されると述べた。一般に、ボトムアップの 『中枢感作』サブタイプは、負担が少ないと示される。この記述に基づいて、『トリガーポイント(TrP)』はボトムアップに分類される可能性があると仮定できる。しかし、『中枢感作(Central Sensitization)』が疼痛患者の特徴であると考えると、『潜在性トリガーポイント(LTrPs:Latent Trigger Points)』によって引き起こされる関連痛は『中枢感作』よりも広い用語である、『ノシプラスティック・ペイン(痛覚変調性疼痛)』として分類できます。」

 スコルプスカ先生の研究の画期的なのは、小殿筋の「活性化トリガーポイント(Active Trigger Point)」と「潜在性トリガーポイント(Latent Trigger Point)」の両方に鍼を刺したら、関連痛の局所の部位の血液流量が顕著に増加し、局所の温度が上昇し、自律神経や脳が関与している可能性を示したことです。小殿筋のトリガーポイントに垂直圧をかけると、大腿や下腿に「響き」ます。この「響く」感覚は、患者の脳の中で起こっています。「活性化トリガーポイント」を鍼刺激すると、脳から自律神経経由で下肢の血流量が実際に増えます。

 『中枢感作』は、ハーバード大学医学部のクリフォード・J・ウルフ(Clifford J. Woolf)教授が1983年の『ネーチャー』で概念を最初に提唱し、後に「脊髄後角の異常興奮」を証明します。

1983年「外傷後疼痛過敏症の中枢要素のエビデンス」

  

 

「神経障害性疼痛(neuropathic pain:ニューロパシック・ペイン)」や

「線維筋痛症(Fibromyalgia:フィブロマイアルジア)」の研究がすすみました。

さらに「過敏性腸症候群(IBS:irritable bowel syndrome)」や、

「顎関節症(TMD:Temporomandibular disorders)」、

「尿路の慢性骨盤痛症候群(urinary chronic pelvic pain syndromes)」=「膀胱痛症候群(Bladder pain syndrome)」なども含まれて拡大されていきます。

1990年代から2000年代は、fMRIの研究によって、脳の機能結合ファンクショナル・コネクティヴィティーの異常があることが認識されていきます。

 

 2014年にアメリカ政府NIHは「慢性疼痛オーバーラップ状態(COPCs:Chronic Overlapping Pain Conditions)」の報告書を発表します。

「慢性緊張型頭痛(Chronic Tension-Type Headache)」、

「慢性片頭痛(Chronic Migraine Headache)」、

「顎関節症(Temporomandibular Disorders)」

「慢性腰痛(Chronic Low Back Pain)」、

「過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)」

「線維筋痛症(Fibromyalgia)」、

「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS:Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome)」、

「子宮内膜症(Endometriosis)」、

「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群(IC/BPS:Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome)」

「ヴォルヴォディニア女性の外陰部痛(Vulvodynia)」、

は『中枢感作(Central Sensitization)』が関連します。全部、鍼灸院の常連さんの症状ですね。

交通事故後の「むちうち損傷」も典型的な「慢性疼痛オーバーラップ状態(COPCs)」と『中枢感作(Central Sensitization)』です。

 

 2016年に国際疼痛学会(IASP:International Association for the Study of Pain)が、

1.『侵害受容性疼痛(Nociceptive Pain:ノシセプティブ・ペイン)』、

2.『神経障害性疼痛(Neuropathic Pain:ニューロパシック・ペイン)』、

に次ぐ、第3の分類として

『ノシプラスティック・ペイン(Nociplastic pain)』を提唱します。

 2021年に「日本痛み学会連合(Union of Pain−related Associations in Japan)」が、

『ノシプラスティック・ペイン(Nociplastic pain)』の訳語を『痛覚変調性疼痛』としました。

『ノシプラスティック(Nociplastic)』の

『ノシ(Noci)』の語源はラテン語の「ノケーレ(nocēre)=害する、損なう」であり、

『プラスティック(plastic)』の語源はギリシャ語の「プラトシュ(πλάτος:/plá.tos/)=成形する」です。

2023年にポーランドのカジミェシュ・プワスキ医科大学の研究者たちが書いた、以下の論文は面白かったです。

2023年 カジミェシュ・プワスキ大学「われわれは、『ノシプラスティック・ペイン痛覚変調性疼痛』について、何を知っているのだろうか?」

  

 

※「【痛覚変調性疼痛(NcplP)の治療】」

 

※「複数の研究者は、非薬理学的アプローチが痛覚変調性疼痛(NcplP)の治療に最も効果的である可能性が高いと報告しています」

※「痛覚変調性疼痛(NcplP)患者は、末梢を標的とした治療よりも中枢を標的とした治療によく反応する可能性が高いためです」

※「エクササイズや教育に加えて、マッサージや鍼治療も痛覚変調性疼痛(NcplP)の治療に効果があることが示されている」

認知行動療法やエクササイズやマッサージや鍼は、『中枢感作(Central Sensitization)』の疼痛に効果があります。

2023年11月に、ポーランドのエルジビエタ・スコルプスカ(Elzbieta Skorupska PhD)博士は、以下の論文を書かれています。

2023年11月 エルジビエタ・スコルプスカ

「筋膜トリガーポイントは『ノシプラスティック・ペイン痛覚変調性疼痛』に関与するか?動物モデルによるスコープレビュー」

J Pain Res. 2023 Nov 8;16:3747–3758.

※「杉本とHsiehは、ともに自律神経系の変化を調査した。杉本らは、中心扁桃体のニューロンの抑制と興奮を通じて、広範囲の機械的感作を制御できることを指摘した。そのため、杉本らは中心扁桃体が痛覚経路に必要であると主張している。」

 

※「統合トリガーポイント仮説によれば、自律神経系は トリガーポイント現象に関与しています。Hsiehらと杉本らはどちらも、自律神経系を部分的に制御する扁桃体(Amygdala)の関与を述べているため、これらの発見に沿っています。」

これは、東京慈恵医大の杉本真理子准教授の研究で、扁桃体(Amygdala)の活性化により、外傷と離れた部位や損傷のない部分に痛みが起こるという論文です。エルジビエタ・スコルプスカ博士は扁桃体(Amygdala)がトリガーポイントの「中枢感作」と関連していると考えられているようです。2020年代のトリガーポイント理論の最前線になります。

2021年 東京慈恵医大

「顔面炎症性疼痛を有するラットの広範囲の機械的感作における中心扁桃体の積極的な役割」

 

 

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。