株式会社 千乃

【鍼灸研究最前線:トリガーポイント(阿是穴)で何が起こっているのか?】

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【鍼灸研究最前線:トリガーポイント(阿是穴)で何が起こっているのか?】

【鍼灸研究最前線:トリガーポイント(阿是穴)で何が起こっているのか?】

「トリガーポイントリリース(虚血性圧迫)による筋膜トリガーポイントの血流と細胞代謝の

 1980年にオレグ・クリシュタル教授が細胞膜を貫く内向き電流という電流現象を発見し、「酸感受性イオンチャネル(ASICsAcid Sensing Ion Channels)」を発見し、トリガーポイントの標準理論や電気鍼の研究で、「疼痛とトリガーポイントと鍼鎮痛とASICsは関係ある」という証拠エビデンスが複数あるのが現状です。ここで注目されるのは『乳酸(Lactate:ラクテート)』または『乳酸塩(Lactic Acid:ラクティック・アシッド)』と、トリガーポイントの関係です。

 しかし、鍼や指圧で治療する際に、トリガーポイント(阿是穴)で何が起こっているのか?は、わからないです。

 

 わたしはトリガーポイントの「持続圧迫・虚血性圧迫(Ischemic Compression)」という技術を愛用しています。30秒から60秒の間、持続圧迫する技術です。持続圧迫していると、深部の硬結が柔らかくなります。非常に技術的に難しく、母指圧迫の場合、「押すこと」ではなく、「母指頭で感じること」に意識をもっていくことが技術的ポイントの一つです。もう一つの技術的ポイントは「力まないこと」です。力まずに、関節のベクトルをそろえて整えつつ、脱力しないと、60秒間の持続圧迫は技術的に難しいです。

 

 コロラド大学医学部のアルバート・モラスカ博士(Albert F. Moraska PhD)は、55歳の頭痛の男性と44歳のうつ病の女性の僧帽筋トリガーポイントに『マイクロダイアリシスプローブ』を挿入し、トリガーポイントの組織外液を計測し、次に僧帽筋に虚血性圧迫を加えて、20分間隔で組織液を収集し、分析しました。虚血性圧迫は1回で最大60秒間、10秒間の休憩の後で、5回継続で、合計6分です。

 圧迫直後の20分間、血液流量は増大しました。

また、乳酸の濃度は0.88 mM から 1.77 mM に倍増しました。グルコースも微増しました。

 

「トリガーポイント解除後 20 分で筋筋膜トリガーポイント内の乳酸濃度、およびそれほどではないが透析液グルコース濃度が増加した。局所栄養血流 (微小血管交換) も同様に増加した。」

「乳酸は、不十分な酸素利用によるグルコースの不完全な酸化によって生成される。したがって、間質乳酸および透析液乳酸は、栄養血流の増加によって直接増加することはない。むしろ、おそらく血流の増加によるグルコースの利用可能性の増加が、筋肉への基質の利用可能性の増加をもたらす。グルコースは解糖によって乳酸に代謝され、乳酸濃度が上昇して、酸化システム(好気呼吸)が再確立され、グルコースと乳酸が完全に酸化されるまで続きます。サイモンズ(Simons)が提唱した『トリガーポイントの統合仮説に沿って、筋.筋膜トリガーポイント(MTrP)の周囲の領域は虚血状態にあり、代謝のためのグルコースと酸素が不足しています。」

「データはこの仮説を支持しており、トリガーポイント結節が弛緩すると、組織への栄養血流が可能になり、基質灌流が増加し、骨格筋への酸素供給が増加して、恒常性の回復に必要な細胞エネルギー需要を満たすことができます。」

以上、引用終わり。

 トリガーポイントを虚血性圧迫して、疼痛が緩和し、局所から採取した組織液ではグルコースと乳酸が増えて、局所血流が増加していました。ここまではファクトです。

モラスカ博士は、虚血性圧迫後の、局所の血流増大によって、虚血状態の組織に酸素とグルコースが供給され、解糖によって乳酸が増えたのではないか?というストーリーです。しかし、実験がパイロット試験のため、わずか2例なのと、『乳酸(Lactate:ラクテート)』は嫌気性の解糖によって生じるため、論理に矛盾があります。

 そもそも、乳酸の蓄積などの組織アシドーシス状態で、トリガーポイントは硬結形成による虚血状態・エネルギー不足状態であり、酸性に傾いた組織でASIC3チャネルが開いて、内向き電流が生じて、痛覚が刺激され筋肉痛が発生するというストーリーです。ここまではエビデンスがあります。しかし、その後で何が起こっているか?は、うまく説明できていない印象です。トリガーポイントの形成や筋肉痛の形成までは、仮説として成立していますが、指圧や鍼の治療論になった途端に説明しづらくなります。

 吸い玉を分析した際は、陰圧によって組織が虚血状態になり、その後で、組織に血液が流れ込み、発痛物質を洗い流して、虚血状態に酸素と栄養が流れ込むという形で、なんとか説明できます。この虚血後再灌流の理論で説明可能です。

 しかし、わたし自身は指圧の『虚血性圧迫』で持続圧迫している最中に、硬結が小さくなっていくのを感じています。虚血後再灌流のタイミングではなく、圧迫による虚血の最中に硬結は柔らかくなっています。この実感から虚血後再灌流による血流改善でトリガーポイントの病理的状態が改善して疼痛がとれるというのは、臨床的現実と一致していないため、納得できないです。

 わたし個人は、鍼の旋撚術によって硬結がやわらかくなる実感や即自的変化などから、局所の結合組織の電気的な変化によるリモデリングと、物理的プレッシャーの圧電効果による「ファシャ(Fascia)」の変化という面から分析したほうが合理性があると個人的には考えています。

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