アメリカの鍼灸の実情
筑波技術大学 客員研究員
首都大学東京大学院 都市環境科学研究科 箕輪政博
1970年代、キッシンジャー訪中に同行した新聞記者ジェームズ・レストンが経験した鍼麻酔手術の報道により米国では鍼灸ブームとなった。1997年の米国国立衛生研究所NIHの声明により治療効果が証明され、国民への理解を後押しし、現在では、全米51州の8割以上で保健医療専門職として公認されている。
州によって異なるが、免許には臨床実習を含む修士相当の専門教育を修得し、専門試験に合格することが求められ、CNT(Clean Needle Technique)の研修と試験を終了して、推薦をもって「職業道徳保証書」などにサインしなければならない。これらのハードルが専門職としての証明であり、米国の民間保険サービスへの担保となっているのだろう。
社会制度、保健医療制度、消費者意識など異なる背景は様々だが、百年たっても「半制度的」で当の従事者にも国民にもわかりにくい位置づけである国にくらべ、20年前後で鍼灸制度システムを作り上げたことを我々はどう理解したらいいのだろう。国がトップダウンで作ったシステムではなく、利用実態やニーズをふまえ米国民の保健医療やプラマリーヘルスケアのためになされたことも深い意味があると思う。