美容鍼灸はなぜ効くの?効果を及ぼす仕組みとは?
2023/10/10
美容鍼灸の効果と効果機序に迫る
美容鍼灸は、リフトアップをはじめ、シワ・たるみ・くすみ・シミ・むくみ・乾燥肌など、さまざまな肌のお悩みに対して効果があるといわれています。「これらの効果は、科学的にどこまで証明されているのでしょうか。また、効果を及ぼす仕組みは解明されているのでしょうか。」と思われている方も多いと思います。
今年6月に開催された第71回全日本鍼灸学会学術大会東京大会では、「美容鍼灸Academic Conference」との共催によるシンポジウム「ここまで分かった美容鍼灸の効果と効果機序」が開催され、3名のシンポジストによる発表とディスカッションが行われました。
顔への鍼が、局所や全身、脳の機能に及ぼす影響
1人目の登壇者は、「顔面の組織(血流)に及ぼす影響」と題し、文献調査の結果と自身の研究内容について発表しました。
リフトアップの効果機序としては、セロトニンによる作用を紹介され、鍼刺激によってラットの血中セロトニン量が増加したという研究結果を踏まえ、セロトニンが抗重力筋に作用することから、姿勢がよくなる、目がぱっちりと開くなどの効果が生まれ、リフトアップにつながると説明しました。
また、共同研究の結果として、耳介部や顔面部への鍼刺激で顔面血流が増加したというデータを紹介しました。血行不良によって起こるくすみ・クマ・シミ・むくみ・肌荒れ・皮膚の弾力低下といった症状を、血流増加で改善できる可能性を発表しました。
なお、顔面部血流増加のメカニズムについては、軸索反射や体性-自律神経反射によるものという説明がありました。
続いて登壇先生は、「顔面の形態(たるみ)に及ぼす影響」と題して発表しました。
国内の美容鍼灸に関する論文の動向は、主観的評価から客観的評価へと変化しており、さらに客観的評価は、香粧品分野的測定から物理的測定法へと変わりつつあると説明し、物理的測定法の例として、3次元画像解析やMRIを用いた評価法による研究事例を紹介しました。
最後に登壇したのは、明治国際医療大学鍼灸学部の山﨑翼先生は「顔面の刺鍼が脳の機能と全身の機能に及ぼす影響」と題して発表しました。
その内容は、顔面の刺鍼が全身の機能に及ぼす効果は非常に多様であり、高次脳機能が関与している可能性が高いとのこと。ただし、効果機序に詳細に迫った研究はまだ少なく、特に耳鍼における愁訴の多様さからは、受療者側の認知特性や心理社会的状況などが絡み合って効果を生じさせている可能性も考えられるため、効果機序の解明を一層困難にさせているのではないかと語りました。
エビデンスを蓄積し、美容鍼灸のさらなる発展へ
発表の後には、シンポジストと司会の先生方も交えて、ディスカッションと質疑応答の時間が設けられ、効果機序、評価法、刺激方法という3つのテーマについて議論が行われました。参加者からは、「耳介への刺激は接触鍼でも効果があるのか」「鍼の太さと効果との関連性は検討しているか」「刺鍼の深度はどの程度が適切か」といった具体的な質問が寄せられ、先生方がそれぞれの見解を述べました。
美容鍼灸の効果と効果機序に関する研究の現状を共有するとともに、今後の臨床や研究にもつながっていくような有意義なシンポジウムでした。美容鍼灸に携わる鍼灸師だけでなく、施術を受けている人や今後受けてみたいと関心を持っている人にとっても、エビデンスにまつわる最新情報の研究発表が行われ、美容はりの施術を行っている鍼灸師の強い味方となる知識だと思われます。