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医療ナビ:しんきゅう 腰痛や神経痛など医師の同意が必要

医療ナビ:しんきゅう 腰痛や神経痛など医師の同意が必要

毎日新聞 2011年1月16日 東京朝刊

◇6疾患には保険が適用
◇少ない有効性示すデータ 海外の比較試験で効果確認も
しんきゅうはどんな疾患に効くのか。医師の同意書を必要とするものの、神経痛や腰痛などで健康保険の適用が認められている。有効性を示す信頼度の高いデータが少ない課題もある。

 

日本鍼灸(しんきゅう)師会(東京)によると、保険が利くのは(1)腰痛(2)神経痛(3)五十肩(4)リウマチ(5)頸椎(けいつい)ねんざ後遺症(むち打ち症)(6)頸腕症候群(首から肩にかけた痛みやしびれ)の6疾患。

 

保険適用を受けたい場合、患者は治療施設で受け取った所定の同意書の用紙を医師に持っていき、必要事項を記入してもらい、治療施設に渡す手続きが必要だ。医師による同意の確認は3カ月ごとに必要になる。

 

日本鍼灸師会保険局長を務める大口鍼灸治療院(埼玉県所沢市)の大口俊徳院長によると、保険適用は約40年前に始まり、7年前までに期間・回数の制限も撤廃された。健康保険組合によっては、いったん患者が治療費の全額を立て替え、本人が支給申請することを条件としているところがあるので確認が必要だ。大口院長は「保険制度をうまく活用していない治療院が少なくないので、もっと患者に知らせてほしい」と話す。

 

しんきゅうは国家資格をもつはり師、きゅう師が治療にあたるが、課題もある。皮膚や神経への刺激で血液循環がよくなるなどと考えられているが、効くメカニズムはよく分かっておらず、有効性を示すデータも少ない。

 

現代医学では治療の有効性を証明する方法として、無作為(ランダム化)比較試験が最も信頼度が高い。薬の場合、大規模な集団を本物の薬と偽薬(プラセボ)の群に分けて、投与後の効果を比較する。

 

しんきゅうの場合は、どの治療でも皮膚に触れるため、偽のはりを打つのが難しく、はりの深さが浅い術と比較される場合が多い。

 

しんきゅうの科学的なデータを集めた「エビデンスに基づく腰痛症の鍼灸医学」(医歯薬出版)を刊行した全日本鍼灸学会によると、はり治療の盛んなドイツでは約10年前から、腰痛患者などを対象に大規模な四つの比較試験が行われた。たとえば、ハイデルベルク大などが参加して行われた約1800人の腰痛患者を3群に分けて比較した試験では、深いはりと浅いはり(プラセボ)に差はなかったものの、電気刺激やマッサージなどの標準治療に比べると、どちらのはりも有効という結果が得られた。

 

しんきゅうなどの代替医療問題に詳しい大野智・早稲田大先端科学・健康医療融合研究機構客員准教授によると、米国の国際統合腫瘍学会は09年の治療ガイドラインで、がんの痛みや抗がん剤服用後の吐き気防止に関する比較試験ではりの効果があったとして推奨しているという。

 

世界的には比較試験のデータが増えつつあるが、日本では信頼度の高いデータは少ないのが現状だ。最近は、長さ0.6ミリの短いはりを丸いシールに張り付けた円皮鍼(えんぴしん)というはりが開発され、はりのない偽シールと比べて有効性を比較する方法も誕生した。

 

人の腕に円皮鍼を打って、腕の曲げ伸ばし回数がどうなるかを試験した呉竹学園東洋医学臨床研究所(東京都新宿区)の古屋英治所長は「円皮鍼は偽シールに比べ、曲げ伸ばし回数が増えた」として、筋肉疲労への効果をさらに調べている。

 

大野准教授はしんきゅう治療について、「健康保険が適用される漢方や現代医学の治療にも、無作為比較試験を経ていないものは多い。とはいえ、しんきゅうは比較試験をもっと増やして信頼度を高めていく努力が必要だ」と指摘する。【小島正美】

 

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